散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2023-01-01から1年間の記事一覧

2023年の映画生活ベストテン

THE FIRST SLAM DUNK“スローモーションの無の境地” 心と体と“死ぬほど愛しています” ミセス・ハリス、パリへ行く“私が私であるための純粋な美への欲望” アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー“10年代を締めくくる宿命のバッドエンド” プレデター:ザ・プレ…

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デジタルネイティブの情報処理能力に圧倒される。呼応するように膨大な情報量より二転三転するストーリー、伏線回収までも見事な上質サスペンスを展開する。発明的な前作より質、量ともにさらなるバージョンアップを図った続編。にしても、たかだか5年で隔世…

あなたの、私のクリスマス?2

人生最悪の一日を経て、今日という人生最良の一日を迎える。そのすべてを愛おしく、誇らしく思う。共に生きる、そして共に生きたすべての人との思い出に。乾杯! ☆3.4

ベター・ウォッチ・アウト: クリスマスの侵略者

キッズムービー的なほのぼのサプライズを期待しては、まさかの胸糞ホラーへのツイストに驚く。暗黒版ホームアローン。 『ヴィジット』の姉弟、オリビア・デヨング&エド・オクセンボールドの再共演も嬉しい。 ☆3.2

あなたの、私のクリスマス?

家族と友人、古い友に新しい友、そして今はいなくとも心の中で生き続けるあなたに。メリークリスマス。 ☆3.6

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY

ヴェノムのうじうじとは大違い、失恋の悲劇より華麗なる覚醒を果たすハーレイ・クインの姿に、自立を勝ち取るガールズエンパワーメントへの連帯を重ねる。道化はどっちだ。 ☆3.1

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~

突難を二度も患った身としては、全く他人事ではない失聴の危機を追体験する。耳鳴りに始まり、水中に突き落とされたようなこもった世界に、実はノイズで溢れる難聴の症状を音響効果にて再現する。まさにあの数週間の悪夢がよみがえる。 聞こえるはずの音が聞…

ニューヨーク 親切なロシア料理店

ロネ・シェルフィグの過去作で言えば『幸せになるためのイタリア語講座』に通じる、弱き者たちの繋がりに救いを見出す群像劇。誰もが手と手を差し伸べあって生きていくべき隣人愛を謳う。しかし、そんな真っ当なドラマがおとぎ話にさえなり得ず、空虚に流れ…

キャメラを止めるな!

すかし芸がことごとくハマる。ドメスティックなはずの笑いのツボを共有しうる日仏の親和性。恐怖と笑いが紙一重ならば、エログロを許容してきた両者の歴史を鑑みるに、今作がハリウッドリメイクではなかった必然性が感じられる。 血と汗と涙とゲロの結晶。“…

ミセス・ハリス、パリへ行く

ドレスを纏う乙女の恍惚。恋に恋するときめきのような。 いつまでも美しくありたい、その純粋な美への欲望。誰のためでもなく、むしろ私が私であるために着飾る“実存的”な、オシャレがあてどない人生の原動力ともなりうる。ジェンダーレスの世とはいえ、まだ…

TENET テネット

150分の長尺の大半が映画的アクションとは分離した、説明のための説明描写であり、見ることよりも理解することに労を割かれるノーラン節がここに極まれる。逆再生というプリミティブなギミックも有機的に機能しているとは思えず、理の通らない難解さにもギブ…

ノック 終末の訪問者

エコーチェンバーに陰謀論と蔓延るこのご時世に、非科学的なカルトを結果的に肯定しかねないシャマランの迂闊さ。世界の命運を“物語”に託し過ぎることの暗部がここにきて露呈する。 ☆3.2

新感染半島 ファイナル・ステージ

『新感染』の衝撃から4年。ゾンビで埋め尽くされた韓国は仁川で、さながらマッドマックスのようなカーチェイスが繰り広げられる。主人公が一般市民より武装した元軍人となれば、アクション過多にバイオハザート化する、ゾンビの存在感は薄まり、一番怖いのは…

NOPE/ノープ

未知との遭遇×ジョーズといったスピルバーグ的スペクタクルを表層に、深層に映画についての映画を語る。 カメラを向ける暴力性、本質的に見世物である映画の残酷性を、らしく“幻の黒人スター”を背景に、寓意に富んだ、謎に満ちたホラーに展開する。黒い肌と…

きさらぎ駅

“FPS”なる主観映像の、無料のPCホラーのようなクオリティに気を失いそうになるが、恒松祐里を一人称とする第二部からが本章。画面映えするヒロインと、半ばコメディと化す小気味よさがB級らしく救われる思い。サトエリの異様なほどの下手な芝居が回収される…

子どもが教えてくれたこと

自らの病状を語る子どもたちの明晰なこと。すでに運命を受け入れたかのような達観した面持ち。人より早く命と向き合わざるを得なかったばかり、人より少し早熟でなければならなかっただけ。それがすなわち不幸とは限らない。不運であって不幸ではない。と、…

ジャッカス FOREVER

ガキの悪ふざけがもはや命がけのスタントに。年齢を重ねる分だけ純度を増すバカの境地。いつまでもウンコチ◯チ◯で笑い転げるおっさんの醜態に呆れつつも、心のどこかで羨ましくもある。 ☆2.9

パリに見出されたピアニスト

もろ“Lust For Life”なフレンチロックのビートがラフマニノフ、ピアノ協奏曲第2番のクライマックスへと転ずる。トレスポオマージュの逃走劇にはじまる不良少年の街角ピアノ。 好きなことを見つけられる才能と、道を指し示すべく、師たる大人の存在に出会うこ…

オンネリとアンネリとひみつのさくせん

「世界は素晴らしい」 大人が子どもたちに示すべきたった一つのメッセージ。 ☆3.0

オンネリとアンネリのふゆ

“小さき者の運命が世界の未来を決める” 北欧の雪景色に映えるパステルカラー、ドリーミーなSEが断続的に鳴る浮遊感。舌ったらずなフィンランド語が可愛らしいオンネリとアンネリのおとぎ話は続く。でも、ちょっと大きくなった彼女たちの“お人形遊び”には、差…

女と男のいる舗道

娼婦に聖女を、ミューズとしての女優を重ねるロジカルな女性史観が、アンナ・カリーナの息遣いにダンス、さらには大粒の涙を流す肉体より魂を見つめるカメラのクローズアップに結実する。あるいはゴダールのおのろけ。 またやってる。始めからずっとやってる…

君はひとりじゃない

人生は悲劇である。との、諦観に宿るコメディの強かさ。その限りにおいては、霊と交信するなどと馬鹿げたスピリチュアルも、一種の救済として機能するアクロバティック。 夜明けと共に希望の光が差し込むラストシーンとは、なんと月並みな表現。だが、これぞ…

進撃の巨人 The Final Season 完結編(後編)

ミカサとユミル。まごうことなき愛と憎しみの戦争。愛ゆえの憎しみに勝るさらなる愛の温もりを知るまで。救済に導く自己犠牲的なその、壮大なラブストーリーの一編であった。 正直なところ、期待していたようなカタルシスではなかった。でも、だからこそのエ…

5時から7時までのクレオ

“恐怖は美なり美は恐怖なり” 厭世的に故郷を彷徨う『鬼火』のそれとはまるで対照的に、夏至は太陽の沈まないパリの街を散歩でもするように、死への恐怖とは生への欲望を、新たな出逢いに希望を見出す逞しさ、美しさを放つ女の哲学。 劇中劇のサイレント映画…

いぬ

すべてはクライマックスの “種あかし”に集束する、仁義。 ソフトハットにトレンチコートを纏ったベルモンドの出で立ちが、『サムライ』でのアラン・ドロンと酷似する。が、個人的には断然、後者推し。フレンチ・ノワール、メルヴィルの深い陰影に浮かぶアン…

ファーザー

「すべての葉を失っていくようだ」 自分が自分でなくなる感覚。娘の顔すらわからなくなる悲しみ。そんな悲しみさえ忘却の彼方へ消えていく無情──死よりも先に無が訪れる病のどうしようもなさ。時間とはつまり記憶の連続性を失い、独りタイムリープを繰り返す…

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

恐竜をまるでペット扱いし、家畜化し、あるいは逆にモンスター化し、畏怖の念を捨て去ったシリーズの末路。 スリルも浪漫も失われ。とってつけた“共存”のメッセージも深掘りされることはなく。脈絡なく乱発される旧作オマージュ、どこかで見たようなスパイア…

ガザの美容室

壁と海に囲まれた“天井なき監獄”、ガザを一軒の閉ざされた美容室に見立て、サイレンや銃撃戦の轟音が鳴り響く、日常が戦時下である彼女たちのリアル、そのカオスと閉塞感を伝える群像劇。 今作から8年後の現在、イスラエルの宣戦布告によりさらなる戦火に覆…

ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ

愛に破れたハートブレイクマンの七転八倒をスラップスティックに描く。喪失より怒りを経て、受容に至るまでの自問自答、自己陶酔的な葛藤を別人格に表出させ、痛々しいラブストーリーに訴える。ロマンスは死せず。『ナチュラル・ボーン・キラーズ』を引用し…

ジャケット

目を閉じれば暗闇の中、静寂を切り裂き、サブリミナルに明滅する悪夢のフラッシュバック。逃れるように甘美なる明晰夢に堕ち、ヒロイックな誇大妄想を浮かべる──タイムリープをくりかえし、命を賭して少女を救う。それが自らの救いともなる。夢と現実をさま…