2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧
ピーター・ジャクソン製作、その愛弟子が監督を務めるSFファンタジーとあれば、世界基準のVFXばかりに目は奪われがちになるところ。原作小説がイギリス人作家の手によるものと知って、やっと、パッチワークなレトロフューチャーに一定の世界観は見て取れる。…
仕事だから命令だから、それが社会経済的な秩序だからなどと、組織の論理を盾に己の非道を正当化してはばからない人でなしが、めでたくゾンビに食い殺される──一方で、憐みの心に人間性を守り抜かんと、ゾンビの群れを激走するヒロイン。その一連のスペクタ…
「愛はとまらない」 そのイントロが流れ出した途端に感情の高ぶりは抑えられない。もはや映画挿入歌として定番の風格すら漂うスターシップの名曲。ある時は恋人たちの夜のドライブを盛り上げ(『マネキン』)、ある時は双子の姉弟の永遠の絆を歌い上げる(『…
前作からイギリス社会を反映した寓意は薄れ──すでに排外思想を乗り越えた隣人たちとの共生は実現され──よりファミリー映画然としたユートピア的世界観に、スケールアップしたアクションとスラップスティックなギャグの応酬は繰り広げられる。 誰もが冒険を夢…
ちょっと、冒頭の、ほんのちょっとだけ、『クローバーフィールド』の再来を期待したりもしたけれど……。 1カット長回しが唯一の売りであるにもかかわらず、ヘタな仕切り直しの度に臨場感は薄れ、リアルタイムよりもむしろ体感時間は伸びていく一方。冗長に、…
冒頭より、5分を超える長回しアクションを切断する数発の銃弾が、“エウロパ”を題する現代の寓話をにわかに浮上させる。 文字通り、空高く浮上する身体──。まるで『トゥモロー・ワールド』のイミテーションは、シリア難民の少年の身に“奇跡”を宿す。 しばしの…
類するならば、M・ナイト・シャマラン『スプリット』級の衝撃! さすが、あっぱれ。我が偏愛映画『モンスター 変身する美女』の監督コンビ。ワンアイデアのジャンルムービー界隈において、彼らはそんなお約束からさらなる捻りを異次元に加える。 まさかあん…
どうしたってタランティーノの『レザボア・ドッグス』を彷彿とさせる。一体どれだけの銃弾が飛び交い、どれだけのうめき声と無駄口が叩かれたか。命のやり取りをブラックコメディに描く噴飯ものの、ましてや小粋な〈人を殺して捨てゼリフ〉までおまけについ…
人生最後の言葉が「愛してる」だったならば。それが真実。真実が僕を裏切ったとしてもそれだけが生きた証──。 「終末時計」も人類滅亡のカウントダウンを残り100秒に設定するような、空想と現実が重なりつつあるような時代の只中にある映画において、およそ…
痩せこけた身体でいえば『マシニスト』のクリスチャン・ベイル。“ジプシーの呪い”といえばサム・ライミの『スペル』を思い浮かべたりもするが……濃霧より浮かび上がるトム・ホランドフィルムの文字にニヤリ。これとて忘れがたいホラーの一品に違いないとの確…
未知なる宇宙の探索は、内宇宙へと闇を映し返す。惑星ソラリス的パラノイアの軌道をなぞりながら、そこは悪名高きポール・W・S・アンダーソン印の、浅薄なB級アクションホラーが仕立てられる。ただし、ある種の“闇の美”が詰め込まれた様式美への追求を侮るな…
木漏れ日の中を赤いワンピースの彼女は少女の面影を残しながら、青白い月明かりの下には確かに小柄な中年女性のシルエットを浮かばせながら。赤子を抱くその後姿に母の背中を見せたかと思えば、暖炉の灯に女の横顔を揺らめかせもする。 光の角度によって、陰…
「ヘンリー・フール・トリロジー」第3作。サイモン・グリムからフェイ・グリムへ、そしてネッド・グリムへと受け継がれた“サーガ”、つまりは囚われのエディプス・コンプレックスにけりをつける最終編。 ヘンリー・フールなる悪魔か師か、たんなるペテンか、…
ファーストカットよりすでに傾いたままのカメラに覗き込む、斜めの世界。 世界の複雑性を飛び越えて、愛が、世界の真実にたどり着けてしまう物語の甘いささやき。虚構にでっちあげられた陰謀論的世界観が、世界の全貌を知り得ない我々、盲目の囚人につかの間…
スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー(1970, スウェーデン/ロイ・アンダーソン) ブルーバレンタイン(2010, 米/デレク・シアンフランス) トリコロール/赤の愛(1994, 仏、ポーランド/クシシュトフ・キエシロフスキー) ドライヴ(2011, 米/ニコラス…
たった3分の刹那に永遠の夢を見る。その瞬間、人生の全てに触れたような恍惚に包まれ、死んでしまってさえ構わないと思う。幸せすぎて。 そんな音楽の魔法を知ってしまったあの頃に、夢中になって聴き漁ったバンドの一つがFoalsだった。 当時のほとんど真っ…
特撮スーパー戦隊の仮面を被った、青春学園ムービーか。これまた『ブレックファスト・クラブ』リバイバル群の一つ。 “補習授業”に集められた出会うはずのなかった者たちが、その交流によって偽らざる自分を知り、そして他者を知る成長の過程にかけがえのない…
ボードゲームからビデオゲームへ装いを新たに、拡張現実から仮想現実への進化はむべなるかな虚構性を高める『ジュマンジ』最新アップデート版。現実をファンタジーが侵食する得体の知れない恐怖を幼心に植え付けた20年前の名作より、そのダークな趣はスポイ…
働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり──。 それは現代のお話。どこか遠い国の誰かを他人事のように憂いてばかりもいられるはずはなく、我が事に差し迫って刮目すべき家族の肖像である。 フランチャイズという名の奴隷契約。自己責任という名の思考停止。…
合理化の号令のもとに、人を人とも思わない、非人間的なシステムが世界中を覆い尽くさんとしている。 老境のケン・ローチが引退表明を撤回してまでも作らねばならず、カンヌがパルムドールを与えざるを得なかった。現代のリアリズム。格差の固定化に分断され…
1. 50回目のファースト・キス“人生とは、記憶の積み重ねそれ以上の感情で彩りあふれるものだから” 2. ありがとう、トニ・エルドマン“GREATEST LOVE OF ALL” 3. 赤ちゃんよ永遠に“誰かにとってのディストピアは誰かにとってのユートピア” 4. ノクターナル・ア…