散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

パディントン 2

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前作からイギリス社会を反映した寓意は薄れ──すでに排外思想を乗り越えた隣人たちとの共生は実現され──よりファミリー映画然としたユートピア的世界観に、スケールアップしたアクションとスラップスティックなギャグの応酬は繰り広げられる。

誰もが冒険を夢見る世界。親切は必ずや報われる世界。世界の善性だけをまっすぐに見つめる、とびきりまるごとハッピーなおとぎ話。
それが、これまた老若男女の心を響かせる傑作。傑作に次ぐ傑作とは、類稀なる続編もの。

物語の前半と後半がまるでシンメトリーを成すように反復し、伏線回収の気持ち良さが最大化されるような、それはもう見事な手際。怒涛のクライマックスに結実するそれは、これぞ映画的大団円とばかりに感嘆の声を漏らさずにはいられない。あらゆるどんなヒーローアクションよりも巧みに、そして高らかに、個性とチームワークの勝利を謳い得てしまう。

改めて、何より雄弁なコメディーの確かさを目の当たりにするもの。
困難な現実をもハッピーに変える哲学。ビタースイートを包み込むユーモア。そんな生き方のコツとやらを、一匹のクマのモフモフと、一口のマーマレードサンドに描き得てしまうのだから。


☆3.8