散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

いぬ

すべてはクライマックスの “種あかし”に集束する、仁義。 ソフトハットにトレンチコートを纏ったベルモンドの出で立ちが、『サムライ』でのアラン・ドロンと酷似する。が、個人的には断然、後者推し。フレンチ・ノワール、メルヴィルの深い陰影に浮かぶアン…

ファーザー

「すべての葉を失っていくようだ」 自分が自分でなくなる感覚。娘の顔すらわからなくなる悲しみ。そんな悲しみさえ忘却の彼方へ消えていく無情──死よりも先に無が訪れる病のどうしようもなさ。時間とはつまり記憶の連続性を失い、独りタイムリープを繰り返す…

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

恐竜をまるでペット扱いし、家畜化し、あるいは逆にモンスター化し、畏怖の念を捨て去ったシリーズの末路。 スリルも浪漫も失われ。とってつけた“共存”のメッセージも深掘りされることはなく。脈絡なく乱発される旧作オマージュ、どこかで見たようなスパイア…

ガザの美容室

壁と海に囲まれた“天井なき監獄”、ガザを一軒の閉ざされた美容室に見立て、サイレンや銃撃戦の轟音が鳴り響く、日常が戦時下である彼女たちのリアル、そのカオスと閉塞感を伝える群像劇。 今作から8年後の現在、イスラエルの宣戦布告によりさらなる戦火に覆…

ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ

愛に破れたハートブレイクマンの七転八倒をスラップスティックに描く。喪失より怒りを経て、受容に至るまでの自問自答、自己陶酔的な葛藤を別人格に表出させ、痛々しいラブストーリーに訴える。ロマンスは死せず。『ナチュラル・ボーン・キラーズ』を引用し…