散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

スイス・アーミー・マン

幸せで美しい人生なんてものは元よりシュール。誰もが、人が生きていくことのクレイジーで“キモチワルイ”本質を有している。 人間らしく、自分らしくと純粋性を高めるほどにそれは顕著に。あるいは愛の純粋性を求めるほどにそれは狂気となって遠ざかっていく…

オリエント急行殺人事件

不朽の名画かくあるべしといった華やかなオーバーチュア、センセーショナルなプロローグを挟んで、オリエント急行出発の地イスタンブールの駅は巧みなカメラワークが人々の往来を賑やかに映す。本編のほとんどが列車内の密室に限定される本作にあって、冒頭…

オリエント急行殺人事件

善と悪のアンバランス。一つの悪に十の人生は狂わされるのだから。 神はいるけど何もしないよね。神は真実を知っても、悪を裁きやしない。ならばと、人間は、愛や、理性や教養といった人間的な善性ゆえの、正義という名の復讐にだって手を染めるだろう。 自…

トラスト・ミー

汚れを知らないイノセンス、汚れにか弱い“ナイーブ”な心のまま。ゆえに哀しく、優しい眼差しを宿したままに。社会の外れをさまよう一人ぼっちたちの、普通とは違う“オフビート”なアンサンブルがたまらなく心地いい。 きっと爆発することはない“手榴弾”を隠し…

FLIRT/フラート

たとえば1993年2月はニューヨークの、または1994年10月のベルリン、1995年3月は東京の街角にうつろう宙ぶらりんの愛の風景。いつの時代も世界中にありふれる、凡庸で深刻な、変わらぬ愛の、孤独の物語。 愛と言葉と銃声に響きあう、官能と安らぎと痛みのテク…

正午から3時まで

音楽が終わり耳に残った歌それは瞬きけれど 長い口づけ愛はついえ優しさはたゆとう思い出は終生私を温める 出会いと別れのつかの間の甘美。なんて美しい、恋の詩だろうか。 正午から3時まで。出会いから別れまでのその間、つかの間の永遠。永遠の瞬き──。人…

さらばバルデス

見渡す限りの荒野を、駆ける馬は少年を乗せて、嘶きは郷愁を誘うカントリーミュージックと重なって落日の空に染み入る。詩情豊かに、滅びゆく歴史のピリオドが綴られる──それは西部開拓期の“黄金時代”への、あるいはインディアンの文化、消滅するフロンティ…

チャトズ・ランド

おそらくは暴力性こそが人間の人間たる本質であろうことの悲劇。戦争と文明は同義にあり、憎しみが憎しみを呼ぶ戦いのための戦い、その連綿たる歴史の上にすべての人類は立っていることを否定できない。 偏見と欲望本位で暴行し、人を殺す──血に飢えた野獣た…