2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧
一人ぼっちの宇宙の辺境に、愛より強く、利害の同志を結ぶ。 愛なんて。どうにもならないこんな夜には、宙を眺めて、闇夜のさらに遠く暗黒の彼方へ思いを馳せる。ちっぽけな存在の取るに足らない苦悩を忘れるため。ただ生き抜くことにのみ、生きればよいのだ…
なるほど、わからん。『インターステラー』よりわからん映画内宇宙理論。やっつけ邦題の“グラビティ”が案外、無関係でもなさそうな。 そんな余計な細部に思考が向かってしまうのは、そこに繰り返される後悔と孤独の心象風景がなかったから。 もはやある種の…
リアルタイムのワンシチュエーション、それ以上の時間と空間が我々観客それぞれの主観的な想像力(と思い込み)によって引き伸ばされる。否が応でも、見る者の人生が投影/反射される映画的なるものの本質。同じスクリーンを眺めながら、誰一人として同じ情…
喪失の悲しみを愛の幻想で埋め合わせようとする男のロマンチック。チープで冗長で、痛々しく、独りよがりで、荒唐無稽な──映画みたいな──ご都合主義も当然のそれは言うまでもなく彼の妄想だから。 よくもそんな自己憐憫を恥ずかしげもなく開陳できたものだと…
『スタア誕生』を知らない身としては、往年のバックステージものそれよりも、必ずや破滅を迎えるがしかし美しい恋という悲劇の、例えば『ラ・ラ・ランド』の変奏として見た。聴き惚れた。そして打ち震えた。 人生でもう二度とない喜びと悲しみ、その全てを昇…
カルトムービーと名のつくもの、避けては通れない映画好きの性。 怖いもの見たさ。絶対に相容れないはずの、つまり一切の感情移入を拒絶する汚らわしい腐れ外道の残酷な所業を、しかしなぜだか嬉々として眺めている倒錯。 快、不快の紙一重。その一線を越え…
グロテスクなのにハートフル。テイラー・スウィフトの曲にまさか泣いちゃう、“ゾンビフルコメディ”との謳い文句に偽りなし。新しさが素晴らしさの大半を占めるジャンルムービーの限りにおいて、確かに味わったことのない温かな余韻を残す。 いかにもアメリカ…
孤独の安息に思う。メメント・モリ。 来る世界の終わり、退屈な悪夢の疑似体験。籠城戦こそゾンビ映画の醍醐味であることをわかってる奴らの企み。 ☆3.4
ツイストの効いた脚本に、芸達者なキャスト陣のいい調子。どんなシリアスな状況にも悪い冗談で返す大人の嗜み。つまり人生は喜劇であると、成熟した共通理解のもとに繰り広げられるドタバタ劇のすべてが楽しく、恋しかろう。 おもしろければいいじゃない。そ…
好きだから一緒にいたいうぶな純情と、好きだからこそ離れなければならない、自立しなければ生きていけない現実との狭間に、二人の永遠は引き裂かれる。 それはきっと誰もが遠き日に思い描いた「夢」の終わり。誰もが“普通”じゃない、けれども普遍の恋の喜び…
ドイツのB級ホラーかくらいの軽い気持ちで見始めたら、これがなかなかに神経をやられるサイコスリラーの掘り出し物。長尺120分超えにも耐えうる一級のエンターテインメント。 「ミレニアム」や「特捜部Q」シリーズといった北欧ミステリーの傑作群とも通じる…
『ゾンビ』のあの名場面より拝借したワンアイデア、ワンシチュエーションの引き伸ばし。なんたる冗長。でも、世界の終わりはきっとこんな感じ。 研究所からウイルス漏れがち。 ☆2.2
霊が必ずしも恐怖の対象だと思っているうちは、まだ本当の恐怖を知らないだけ。避けては通れない人生の孤独、愛ゆえの悲しみを知らない子どもの戯言だ。 ☆3.1
昨日の自分と今日の自分が同じであるという保証などどこにもないのであって、過去から未来へと続いている──かのように思われる記憶の連続性をたった一つの拠り所に、誰が仕組んだやも知れぬ人生と名のつく物語を演じさせられているに過ぎない。あるいは今、…
さすが『コンプライアンス』の監督作、こんな人間狩りのジャンル的枠組みにおいても時事性を鋭く突きつける。 分断の時代の社会派映画としてもおそらくは最も賢明な視座から、右も左も、排外主義者もリベラルエリートも、その不毛な“戦争”の馬鹿馬鹿しさを嗤…
夜食のポタージュもどしそうになった。 世間的には異常とされるだろう膨大なホラー映画の脳内アーカイブを探っても、これほどの身体反応を催す作品はそう多くなかったように思う。遡ればフランス産スプラッターの『マーターズ』以来だろうか、それ級のトラウ…
超パンクな幕開けに、超ロマンチックなエンディング。映画も人生もそれだけあれば十分なんじゃないかと思う。あとはドゥビドゥビドゥーの、ケセラセラ。 かくも映画のような人生を。 ☆3.2
ジャームッシュ版ゾンビ映画との触れ込み通り、その作家性とジャンル的意匠が不可分なく混ざり合った至高のオフビート。シュールでクリーピーな生ける屍の群れを怪優揃いのファミリー集結で描く。勝手知ったる名プレイヤーたちのまるで気ままなジャムセッシ…
まるで『ストレンジャー・シングス』の二番煎じと見れば、全編垂れ流しのシンセポップがせっかくの80'ジュブナイルムービーの意匠を台無しにしているきらいもあったが、そんな解釈はクライマックスを目前に一変する。あまりに騒然なるシリアルキラー登場の序…
ブロンソン映画に流れる慕情。もちろん、恋女房ジルへの揺るぎない眼差しそのことである。 おそらくはどんな芸術よりも雄弁に、今は亡き、まごうことなき愛の風景をスクリーンに蘇らせてみせる。映画という魔術的なメディアが語り得るその美を、奇跡と呼ばず…
認知を歪めるドラッグムービーの極北。なんと恐ろしく危険な心地良さだろうか。不穏に包まれたダウナーな多幸感がしばし理性を鈍らせ、あらゆる負の感情を忘れさせてくれる。 一人の人間として、己の人生として乗り越えるべき抑圧や悲しみ、そして恐怖を──“…
ディズニープリンセスを再定義する一方で、伝統的な愛のかたちにも回帰していった前作。そのハッピーエンドを語り直すかのように、ともすればリベラルエリート的な正しさに陥りかねないテーマをつぶさに、より進歩的な共生のリアルを訴えかける続編。 多様性…