散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ジャケット

目を閉じれば暗闇の中、静寂を切り裂き、サブリミナルに明滅する悪夢のフラッシュバック。逃れるように甘美なる明晰夢に堕ち、ヒロイックな誇大妄想を浮かべる──タイムリープをくりかえし、命を賭して少女を救う。それが自らの救いともなる。夢と現実をさま…

戦慄怪奇ファイル コワすぎ!最終章

POV作品としては稀有なほどのキャストのカリスマでもって牽引するシリーズにあって、工藤、市川の不在を補うべく、カメラマン田代が奮闘を見せるも力及ばずといったところ。宇野と白石の虚実をうつろう迷コンビも、「コワすぎ最終章」と身構えることにはやや…

青いパパイヤの香り

琵琶の旋律に虫の声、鳥のさえずりが響き合う静謐で流麗な映像美に反し、戦闘機の轟音やよもや怪談のそれのような不穏で不可解な劇伴との不協和音は、対位法による重層的なテクスチャ、あるいは『ミツバチのささやき』をも想起する暗喩表現を思わずにはいら…

アーカイヴ

夢ならば覚める。悪夢とて終わる。それが過去に起因する記憶の“アーカイヴ”に過ぎないとしたら。現在、未来へと絶え間なく押し寄せる時間の波に埋もれ、その喜びや悲しみさえもやがては薄らいでいく人間の無常。片や、命ある限りにおいて、永遠を有する人工…

ブリタニー・マーフィ -人気女優 死の真相-

誰もを魅了する屈託のない笑顔、共演者と恋に落ちれば虚実ないまぜのラブストーリーをフィルムに焼き付ける。その天性の純真さゆえにハリウッドの魔境に迷い込み、メディアの狂騒に苛まれ、そして虚言癖のソシオパスにマインドコントロールされ落ちぶれてい…

エイドリアン 亡き妻が世界に遺したもの

『アンビリーバブル・トゥルース』、『トラスト・ミー』と、初期ハル・ハートリー作品のミューズ。さらには昨今のムーブメントにも繋がる、フェミニズム映画作家の先駆けでもあったエイドリアン・シェリーの半生を称えるドキュメンタリー。しかしながら、200…