散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

オリ・マキの人生で最も幸せな日

16ミリのモノクロフィルムに揺らめく川面はきらきらと輝く。視線の先には仲睦まじい老夫婦の微笑み。負け犬ボクサーとその彼女の未来をまるで祝福するかのように。敗北の先に見る景色の中にこそ、人生で最も大切なその一瞬は映り込むものなのだろう。 古き良…

ラ・ポワント・クールト

映画を見ることでしかやり過ごせない夜があって。そしてついには映画を見ることさえもできない夜になって。ならばせめてBGM(バックグラウンド・ムービー)として、見なくとも点けているだけで心地のいい映画を聞き流そうとなれば、やはりそれはヌーヴェルヴ…

アクアマン

誰がためでもなく、皆のために戦うスーパーヒーロー。対立し、分断した世界の融和を図る21世紀型の英雄像。あるいは戦いを終わらせるための戦いこそが真の正義であるという。ジェイソン・モモアのエキゾチックな存在感が(そのステレオタイプを超越して)普…

サマーフィーリング

見慣れた公園や訪れるはずだった街の風景がただただ美しく、それゆえに哀しく。彼女の思い出と、あり得たはずの未来の残影が今も鮮やかに、しかし少しずつ色褪せていく時の流れに切なさを募らせる。 喪失にこそより強く確かめられる愛の無情を、ロメールのよ…