見慣れた公園や訪れるはずだった街の風景がただただ美しく、それゆえに哀しく。彼女の思い出と、あり得たはずの未来の残影が今も鮮やかに、しかし少しずつ色褪せていく時の流れに切なさを募らせる。
喪失にこそより強く確かめられる愛の無情を、ロメールのような映像美、ビフォアシリーズのような語らいによって綴る──夏、という神々の作った季節の、遍在するいくつもの記憶。タヒチ・ボーイのノスタルジックな旋律と響き合い、それは音楽のように。救済し、そして祝福する。我が最愛の孤独な人生を。
「一緒だけど別々」と。埋まることのない不在感を抱えながらそれでも生きている今日を。
☆3.9