散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ホテル・ニューハンプシャー

災難に次ぐ災難、それでも生き続けるしかない人生への諦念を“おとぎ話”に謳い上げる。シリアスとユーモアの歪な塩梅はまさに人生の辛酸を味わうかのごとく。妙齢なるジョディ・フォスターの魅惑に酔いしれながら。 ☆3.0

世界にひとつのロマンティック

ロマコメの皮をかぶった、あって然るべき医療保険法案の一つさえ通せないアメリカ議会への風刺を込めた社会派コメディ。それでもダンスシーンにNG集のおまけ付きで、ハッピーエンディングはお約束の通り。 情緒不安定な画調は、癇癪持ちのデヴィッド・O・ラ…

68キル

強かなる女の秘密、嘘、涙、あるいは誘惑への服従さえも、男の愛であって然るべき狂気の沙汰を嗤う。自虐。歪んだ女性崇拝にマゾヒズムを充足させるポルノ的な愉悦に浸る。グロテスクかつエロティックな、巻き込まれ型スリラーに弄ばれては昇天必至……のはず…

ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女

チャドルを纏ったヴァンパイアガールが男を喰らって回るという政治的な意図いかんにかかわらず、対照的にロマンチックなボーイミーツガールの至上の美が、漆黒の闇とまばゆい光のコントラストに映える。モノクロームの耽美。 製作総指揮にイライジャ・ウッド…

ミッドナイト・ガイズ

老境を迎えたジジイの自惚れも、幻想においては許されし美学。ダイナーと娼館とを周回する一夜のロードムービーに、いつまでたっても悪ガキのままの、男のロマンティシズムを垂れ流す。 クリストファー・ウォーケン、アル・パチーノ、アラン・アーキンと名優…

血を吸うカメラ

“PEEPING TOM“というタイトルに呼応して、ヒッチコック似の変態紳士が通りすがる“コメディ”。 大事そうに抱えるシネカメラの、その先端に仕込んだ鋭利な刃物に男の性的不能を覗かせる。倒錯的な欲望への犯行を理性的なカメラワーク、照明の演出で魅せる不確…

まともな男

責任逃れの非主体性、その場しのぎの事なかれ主義──自己保身のための“優しい嘘”の、偽善はおろかその加害性をも露わにする、どこまでもアイロニックで冷ややかな視線。事もあろうにそんな嘘がまかり通ってしまう人の世の、カタルシスなき悲劇に救いなし。 一…

ハネムーン

新種のボディスナッチャーズ。そのメタファーは、愛がゆえの喪失への不安。いつか自分の“もの”ではなくなってしまう、ぼくの知らない君へと変わっていってしまう。そんな嫉妬と妄執にかられた狭窄的な愛の不可能性を、またしても新進気鋭の女性監督はホラー…

マングラー

スティーヴン・キング×トビー・フーパー。 巨大洗濯工場のスチームパンク感に心躍らせるも、物語は悪魔、生贄、処女の血と、月並みなオカルトモチーフに停滞する。が、ラストに仰天、サービス満点の大仕掛け。モンスターパニック、アーメン、ガッデム! ☆3.1

ヘル・レイザー

ピンヘッドのヴィジュアルだけですでにトラウマ級のインパクトを誇るが、なんてことはない、思いのほかお茶目な魔道士軍団が微笑ましく、随所にグロテスクも、ホラーとユーモアの表裏一体が緊張と緩和のエンターテインメントを楽しませる。悲鳴を上げては笑…

アイム・ノット・シリアルキラー

アメリカの寒々とした田舎町を舞台に、少年と老人の交流に心温めるはずのドラマはまさかの狂気を迂回し、愛へとたどり着く。ソシオパス、その殺人衝動との葛藤の末に愛への目覚めを語りうるアクロバット。ざらついた16ミリフィルムの詩情を突如として脅かす…

隣の影

心の疵を埋め合わす邪悪。些細な気の迷いが取り返しのつかない事態を引き起こす。 「根に持つ」とか「影を落とす」といった言語表現にも結びつく一本の木をシンボリックに、北欧はアイスランドとて当然起こりうる隣人トラブルを描くブラックすぎるホームドラ…

マンディ 地獄のロード・ウォリアー

これはどえらいドラッグムービー。本邦にて合法的にそのトリップなる酩酊感を味わえる上物。甘美で夢幻的な愛の風景から、章を隔て、血みどろバイオレンスのゴアが襲う暴力的なまでのサイケな明滅。ヨハン・ヨハンソンの遺したスコアの轟音が脳髄を響かせ、…

カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇

ラヴクラフト原作の超常的な世界観に、まばゆい極彩色が映える。グロテスクも良きホラー映画の美しさかな。すべてはニコラス・ケイジの狂気の淵を飾る。 ☆3.5

HUNT/餌 ハント・エサ

姿形を変えて君臨する“百獣の王”に、親愛さらなる崇拝の念を抱くは飼い慣らされた野生。我々、人類はもはや“ネコ”の御前にまったくの無力を思い知るのである。 ☆2.7

ボディ・スナッチャーズ

人間に限りなく近い人間ならざるものへの生理的嫌悪。いくら言葉が通じても、決して心の通わない本質的なディスコミュニケーションの恐怖。原作の反共、個の喪失というテーマをより深化、普遍化させる実に4度のリメイクを数える侵略SF。加えて、その国家の成…