散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ER緊急救命室<ファースト・シーズン>

言わずもがな、医療ドラマの最高峰。Emergency Room(救急救命室)を舞台に繰り広げられる命のドラマ──などと感傷に浸っている暇などないほどに、目まぐるしく壮絶な、まるで戦場に飛び込むカメラの臨場感。 連日連夜、隣り合わせの生と死を綱渡りする緊張感…

狼は天使の匂い

『狼は天使の匂い』と、記憶の片隅にあったであろうそのタイトルを告げられるという夢を見たのが昨晩のこと。そんな深層心理に導かれるままに、早速、ハードディスクの録画リストを少し遡って、町山氏推薦の本作を観る。『禁じられた遊び』、『太陽がいっぱ…

フランケンシュタインの花嫁

望まずして生まれ落ち、わけもわからない世界の混沌と、孤独の中を、右往左往する怪物に重ねられるのは人間そのものの悲哀。 雷鳴の轟く夜に。心を癒す美しい音楽や友の温もりも束の間。その怪奇物語のカタルシスとは、やはり悲劇によってもたらされる一筋の…

フランケンシュタイン

名作『ミツバチのささやき』において主人公アナの目に焼き付いた、怪物と少女をおそう悲劇。映画史上、最も重要な1シーンは思っていたよりも早くに訪れる。 その後、クライマックスに見た光景は、“松明を持った村人たち”に象徴化される、普通の人間たちの愚…

特捜部Q Pからのメッセージ

この世に厳然と悪は存在し、救いきれない命というものがあり、そして絶えず悲劇は繰り返されているという、どうしようもない悲しみと怒りに震える。その業とも言うべき人間の罪を、背負い過ぎるあまり病んでいく心。その陰鬱な心象風景と重なるかのごとく静…

日本沈没

思考実験、文明論としてのハードSF。その帰結としてのヒューマニズム。そして人間の無力。 ゴジラを上回る自然災害のカタストロフィが日本列島を襲う。その“虚構”に映し出される恐怖と絶望の光景は、公開から半世紀の現在により真実味を増して訴える。 ○○年…

アンドレス・イニエスタ -誕生の秘密-

「ゴールを決め、優勝したとき、友を思い出すのがフットボールだ」 盟友フェルナンド・トーレスのそんな言葉が、美辞麗句でも何でもなく、“我らが”アンドレス・イニエスタ──あるいは世界最高のフットボーラー。間違いなく、世界で最も愛されたフットボーラー…

バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3

三部作、とはいえ一続きの、まるで一夜の夢のような大冒険がついに幕を下ろす。 目覚めの時──そこに母の姿はなく──それは少年が大人になるための物語の終わり。 大人になるということは、“白紙”の未来を自らの手で切り開いていくということは、あり得べき未…

黒い箱のアリス

いくら悲しみの慟哭が耳を突き刺し、どれだけの痛みがその柔らかな肌を貫こうとも。または如何なる残酷に手を染めてまでも、守り抜こうとする“思い”。 たとえ報われない思いと知りつつも。それがどんなに“空虚”であろうとも。あり得べき最善の未来へ──執着せ…

エリザベスタウン

あの頃。まさに希死念慮に囚われ、完全に人生をロストした僕の、メランコリーをロマンティックに変えたいくつかのラブストーリーのうちの特別な一本。運命との暗い約束を心に誓って過ごす日々に、その決心を思いとどまらせたのは、映画という新たな友との出…

キラー・メイズ

不思議の国の“デイブ”の迷宮はダンボール製。自分で作ったガラクタの山に身動きがとれなくなってしまった悲劇か喜劇か。 大人になりきれない男が作り上げた、複雑に入り組んだ自意識の袋小路。恋人も親友たちも、もう救い出すことはできず、むしろ彼らを呑み…

クロール ー凶暴領域ー

忍び寄る彼らの横顔はまるで小さな恐竜。なるほどジェネリック・ジュラシックパークの如くよくできたワニワニパニック。 ほぼワンシチュエーションのタイトなスリラーでありながら、刻一刻と迫るタイムリミットに、絶望に次ぐ絶望の光景がめくるめく押し寄せ…

逃げるは恥だが役に立つ

夫婦を超えてゆけ二人を超えてゆけ一人を超えてゆけ それは(おうち時間を「“うち”で踊ろう」と言い換えたように)あらゆる多様な個人を内包する恋のうた。私たちを縛るすべての──当たり前、常識、普通、そんな呪いのような言葉からの解放をうたう愛の物語。…

アップグレード

人生を襲うまごうことなき絶望に際し、その過酷な現実と人間らしく戦い続けることと、平和な仮想世界に死んだ心で耽溺することの二者択一を迫られたなら、後者を選ばないとはとても言えない。 もはやそんな選択肢が机上の空論でもなくなりそうな時代。 新し…