散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

エリザベスタウン

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あの頃。まさに希死念慮に囚われ、完全に人生をロストした僕の、メランコリーをロマンティックに変えたいくつかのラブストーリーのうちの特別な一本。
運命との暗い約束を心に誓って過ごす日々に、その決心を思いとどまらせたのは、映画という新たな友との出会いだった。

おそらくは絶えることのない喪失感を“穴埋め”しうる唯一の。山も谷もなく、ただドン底を進む他ない人間の道しるべともなる──散文とロマンティック。

それらはすべて、“成功”とは違う、あらゆる“変わり者”たちの幸福を巡る、ロードムービーという名の人生の縮図。
その“命”のモンタージュに投影される、幼き日々の思い出の数々。亡き父とのおぼろげな記憶。忘れえぬ、ある愛の風景が──死せずして、それは走馬灯のように駆けめぐるノスタルジア

そうして明くる朝はやってくるのだった。

悩みを抱えたまま踊らせる音楽、ロックンロールを聞きながら。
悲しみを抱きしめて進むロマンティックを知った夜から。


☆4.6