2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧
監督自身も『ランボー』、『キル・ビル』、『オールド・ボーイ』と気骨ある作品を参照に挙げているが、中でも特筆すべきは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』からの継承だろう。 砂漠の荒野。逃走と追走の往復。暴力に支配される陸の孤島で、生と死の二…
ともすれば、迫り来る死そのものよりも恐ろしい病。記憶から自我の喪失までを伴う進行性の恐怖が、所詮はオカルト的な悪夢に収束してくれるならば、むしろこんなに気の休まることはない。虚構性を増すほどに恐怖が和らぐ本作。モキュメンタリーの擬似性に忠…
ムチで打たれ、鎖に繋がれ、挙げ句、最果ての地に置き去りにされても尚、再会を待ちわびた飼い主の元へ、猛然と駆け寄る“物言わぬ”友人たち。 健気で従順で、ゆえに愛らしくそして憐れな犬よ。 「タロ」そして「ジロ」と。彼らを呼ぶ健さんの、声にならない…
ヒラリーvs.トランプの前哨戦のごとく、国家を二分する大統領選の最中にこれだけ政治色の露骨な作品がエンターテインメントとして受け入れられるのだから。にもかかわらず、映画の精神とはまるで反する未来を彼らは選ぶのだから(選ぶべき未来がマークシート…
前作を観たのが、ちょうどトランプの大統領就任時。こんな狂った世界最高権力者のもとで、世界はいかにして悪くなっていくのだろうかと憂えてもいたものだが、まさかこんな形で一つのディストピア的風景が実現してしまうとは思ってもみなかった。 コロナで銃…
ねらわれたのは学園の自由──。 自由からの逃走。 ゲシュタポをモチーフとしたコスチュームを纏い、自警をはじめる生徒たち。生徒会という民主的な手続きを経て、全体主義化していく“普通”の学園は、ジョージ・オーウェル『1984』的世界観をも思わせる。 大林…
人生は、シネマティック! ヒステリックだがストイックヒロイック、パセティックでロマンティック ビューティフルにビューティフルに 生きて、死ぬ、ための僕らの人生、人生! (毛皮のマリーズ「ビューティフル」より) まるで映画のような人生を。まるで人…
“緊急事態”に、国家は弱い者から順に切り捨てる。ただし、それは民主国家において民衆の本意であり、誰もが自分よりも弱い者を探して安心する社会の暗黙の序列である。 そうした社会に溜め込まれる不平不満は、いつか必ず実体を伴って暴発する。社会全体とし…
恐怖に怯える者たちの目が、すうっと邪悪に染まる瞬間を映し得る。その哀れな醜さを眼前にして、怒りすらも通り越した絶望の淵で、一体どれだけの者が人間としての尊厳を失わず、つまり愛を手放さずにいられるかということ。 極限の密室空間に象徴化される人…
「ステイホーム」の緊急事態もいずれ日常と化し、殺伐とした町並みに恐怖の渦巻く近未来がいつ訪れないとも限らない。それは誰にもわからない。わからない、ということ“それ”自体が不安と恐怖をますます醸成し、疑心暗鬼を生じ、人と人とを繋ぐ有形無形の社…
日々、喪失の痛みが癒えることはない。それでも前へと進む決断が、人を成長させるのだ。 Happy Death Dayさようなら、昨日までの私。 Happy Birthdayおめでとう、今日までの、そして明日からの私。 悲しみの記憶とて我が人生よ。愛ゆえの悲しみ。すべてを愛…
映画はよく死を描く。 それは人生の尊さを改める思考実験、または失敗の効く予行演習とでも言い得よう。一度きりの、やり直しの効かない人生を俯瞰し、“本当の自分”を見つめ、在りたい姿を自問する。死を眼前にすることで、改めて生に向き合う──忙しなく続く…
人々を、あるいは国家を繋ぐ歴史、伝統という“虚構”の語り部について、未来の新たな客観視点より再構築し、そして映画というさらなる虚構のまなざしによって“真実”というものの多層性を浮かび上がらせる確かな試み。 異様なる不穏を漂わせながら、繊細かつ坦…
一つの謎に二つの真実。SFより、ジャンルをまたいで到達する衝撃の結末。 とはいえ、謎とは、謎それ自体が魅惑なのであって、必ずしも解き明かされるべきものでもない。回収されない伏線、解釈の及ばないストーリーの余白が画面をはみ出し、脳裏にこびりつく…
あるいは黙示録的な、ある種のディストピア的風景が実現されてしまった昨今の、現実が虚構に追いついてしまった非日常において。世界が変われば、自分も変わる。それはどうしようもなく。現実を通して虚構を見つめる映画体験も当然、まったく同じ感性のまま…
モラルテールならざるホラームービーの、ただただ不快な読後感。顔の見えない無数の悪意と、抗いようのない暴力的な犯罪にさらされる不条理。せめて、これは映画ゆえに“フェイク”であったとオチでもつければ、笑って済ませられる“ゲームナイト”であったもの…