散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ハッピー・デス・デイ

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映画はよく死を描く。

それは人生の尊さを改める思考実験、または失敗の効く予行演習とでも言い得よう。一度きりの、やり直しの効かない人生を俯瞰し、“本当の自分”を見つめ、在りたい姿を自問する。死を眼前にすることで、改めて生に向き合う──忙しなく続く日常を止める、ドラマティックなトリップ。依存性あり。想像上の臨死体験とあらば、それはある種の劇薬である。

だけど僕らの、病める日々の、眠れぬ夜の処方箋。
暗闇に浮かぶ“悪夢”。その絶望の叫び。死の衝動は、その表裏一体にある心の叫びと響き合う。

良き映画、良きホラー映画を見終えた時、この胸に去来するのは、まごうことなき生への渇望であるから。


☆3.9