散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

薄闇にふと、天井の木目調がシミュラクラを浮かべる時、“それ”は突然、姿を現したのだった。 隣で眠る弟を起こさないようおもむろに立ち上がり、まだ明かりのついたリビングへ、両親の元へ急ぐ。まるで平静を保つかのように、しかし内心では感じたことのない…

名探偵コナン 時計じかけの摩天楼

劇場版第1作にして、最も映画然としたシリーズ屈指の名作ではないだろうか。 最初で最後かもしれない映画化への意気込み、「映画」というものへの熱い情熱が全編にみなぎる一大エンターテインメント。そのアクションにせよ、サスペンスにせよ、ロマンスにせ…

ブラック・クランズマン

スパイク・リー彼自身が、世論を動かすアジテーターとしてのカリスマをすでに纏ってしまっている以上、どんなに立派な映画であっても、まごうことなき正義(Right Thing)がなされていたとしても、むしろだからこそ、まずは一歩引いて疑うことから始めなけれ…

ベルリン・シンドローム

実話を基にする監禁モノのそのリアルな暴力描写よりも、それが男性社会で縛られる女性たちの痛みのメタファーとなりうることよりもまず、誰もが一度は思い描くであろう理想の恋がその実、悪夢に他ならないという非情なる眼差しにショックを隠し切れない。 幸…

ラスト・クリスマス

君は君だよ。 そのトートロジカルな愛を伝える幾千万ものラブソングがあり、ラブストーリーがあり。僕が僕であるために言葉を紡ぐのも同じ。 「普通」というしがらみに傷つき、がんじがらめになっている君へ。君はいつかの僕でもあって。他の誰かと比べるで…