2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧
プロローグを経て、ピジョンと共に滑空し、原っぱに駆けるケンタウロスを見下ろすオープニングショットの高鳴りは、あの『ジュラシック・パーク』で“生きた”ブラキオサウルスを目の当たりにした時のそれと匹敵する──と言ってしまうのも、それが童心に抱いた…
人は生きるために忘れていく。全てを忘れずになんていたら、到底、正気ではいられない。狂ってしまう。都合よく忘れるべくして忘れ、時に嘘で身を守ってやり過ごすのである。 男の復讐は、それを、最も思い出してはならない過去を、当人に突きつけるもの。償…
伝えたい物語があるのはきっと、届けたい人がいるから。 物語を紡ぐのは。物語に涙するのは。そんな物語なくして生きてはいけない僕たちは、伝えたい想いを物語に託すから。 これは自閉症を抱える“少数”の者たちに当てられた希望の光にとどまらない。同じ広…
民族音楽をモチーフとしたプリミティブなBGMが鼓舞するアクションの肉体美。その伝統を背景とした衣装、デザインに融合する最先端テクノロジー。 アフロ・フューチャリズムという名の“黄金郷”に、アフリカ並びにアフリカ系アメリカ人の歴史と今を投影し、"Lo…
オリジナルキャストの続投に加え、豪華ゲスト俳優陣、ファッション界からのカメオ出演。スティングをはじめ音楽界からも、ジャスティン・ビーバー、スクリレックス、アリアナ・グランデ、ケイティ・ペリーなど、他にも数え切れないほどの“ポップ・スター”狂…
「所有とは責任」 誰もがモノに囲まれた生活は、それを営んでいることの実践の表れ。 その重荷を一旦下ろさなければ潰れてしまいそうだった。日常をできる限り離れて、不幸について、つまり人生について考えるだけのスペースを確保する必要がきっとあった。…
本当はすべての出来事に理由なんかはないのだけれど、その不思議な偶然の一つ一つに意味を与えて、物語で繋いであげればきっと、この世界はなんて美しく。人生は素晴らしく。色とりどりの感動に溢れた愛と冒険の日々──。ハッピー・エンディングはそうして作…
誰もが『ラ・ブーム』で彼女と出会い、きっと恋をしたならば。こんな何の変哲もない青春ドラマにこそ重ねられる等身大の姿。あっという間に大人になる少女の煌めきが記録される成長譚。どうしたものか、とことん作品に恵まれない彼女のフィルモグラフィーに…
ニュー・オーダーの「ブルー・マンデー」が今にも流れ出しそうなドラムマシンからぶつ切りに、ムーディーでジャジーなサクソフォンの音色へと繋がれるBGMと合わせて、躁的なカメラワークによるカーアクションと、ボンド気取りのプレイボーイの美女漁りを見せ…
ドラキュラ俳優として知られるベラ・ルゴシ主演の、元祖ゾンビ映画。こんな怪奇映画(今で言う低予算ホラー)でさえ、あるいはそれゆえに夢幻的な、モノクロ映画の光と影。 「夢を見ていたわ」 昏睡する美女の、“心のない美しさ”こそむしろ美しく映し得てし…
脳をデジタル化すれば記憶の保存は可能である。それを新しい肉体にダウンロードすれば、人間の主体が記憶に基づきアイデンティファイされる限りにおいて、永遠の命は実現し得る。なんてことが、2045年までに!? 倫理、哲学を置き去りにして、未来への繁栄を…
めくるめく、80'sポップカルチャーの洪水に溺れそうになりながら、その多幸感に満ち溢れる短過ぎた140分。 確認できるだけでも枚挙にいとまがないほどのリファレンスは、そのキャラクター、デザイン、まつわる音楽や台詞から思想に至るまで、映画史を中心と…
またしても不条理な運命に翻弄され、復讐の鬼と化すリーアム・ニーソンには違いないし、爽快な「ナメてた相手が実は殺人マシンでした映画」にも違いはないのだが、人の死をとことん笑うブラックコメディの度を越した悪趣味は、虚実重なる彼の悲哀をついに消…
『ブレックファスト・クラブ』にはじまる80年代ジョン・ヒューズ映画の精神、その系譜に連なる隠れた名作を、ビートルズのヒットナンバーと共に記憶する。 恋は、自分を着飾るアクセサリーなんかじゃなくて。ホモソーシャルを強化するための力比べなんかじゃ…
「わけのわからない世界に放り込まれて引きずり回されたい」という、いささか病的な欲望を最も即時的に満たしてくれるのが、所謂、“巻き込まれ型サスペンス”の物語である。本作に至っては、さらにロマンスとコメディーの定型が合わさって、おまけに若き日の…