散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ミステリー・デイト

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「わけのわからない世界に放り込まれて引きずり回されたい」という、いささか病的な欲望を最も即時的に満たしてくれるのが、所謂、“巻き込まれ型サスペンス”の物語である。
本作に至っては、さらにロマンスとコメディーの定型が合わさって、おまけに若き日のイーサン・ホークのアイドルムービー的な面白みまで加味されるのだから、それだけで十分、人によっては退屈しのぎに、人によっては眠れぬ夜のお供にもなるだろう。

ブロンドのソバージュが夕陽に眩しいヒロインの登場から、そのオープニングを飾るヒットソングのイントロから、80年代ノスタルジーの芳香がむんむんと立ちこめる。
ただし、そのノスタルジーとは、過去に浸るのとは少し意味が違う。僕にとっての知らない世界、知らない時代への、憧憬を孕んだ新たな思い出なのである。


☆3.4