散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

REVENGE リベンジ

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監督自身も『ランボー』、『キル・ビル』、『オールド・ボーイ』と気骨ある作品を参照に挙げているが、中でも特筆すべきは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』からの継承だろう。

砂漠の荒野。逃走と追走の往復。暴力に支配される陸の孤島で、生と死の二つに一つを巡る戦い。その極限に純化された物語を支える不屈のヒロインに、現代的なフェミニズムの精神が符合する。

いわゆるリベンジ・ムービーは数あれど、そのほとんどが悲劇に見舞われたヒロインを扇情的に、または同情的に愛でるための一種のジャンルものとして、二次被害的に消費されてきた側面を否定できないように思う。
そんな流れに一石を投じる、MeTooの新時代に生まれるべくして生まれたフレンチ・スプラッターの傑作。女性監督という当事者性を伴って、嫌悪と“怒り”のグロテスクな表出は下衆な視線をことごとく跳ね除けてみせるはずだ。

ビビッドな色彩に血塗られる深紅。世界にあまねく痛みへの共感が、アートに昇華されるカタルシスの恍惚。


☆4.1