散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

沈黙

「神の沈黙三部作」の最終編として括られるが、それはベルイマン作品に通底するテーマのようにも思える。愛を巡る欲望と理性の相克。神なき世界に彷徨う人間の悲劇を、光と影、音楽と沈黙の甘美なる調和に紡ぎ上げる。高尚で、官能的なまでの映画芸術の極み…

皆さま、ごきげんよう

強靭な人間愛に支えられたブラックユーモア、その聡明なる視座を持ちえない己の未熟さを認めざるをえない。脈略のない不条理劇をただただシュールと受け流すことしかできない見識の狭さ、人生経験の薄さを顧みると共に、あの頃のように、映画芸術への愚直な…

劇場版 呪術廻戦 0

ジャンプ的少年漫画のメソッドに加え、正義の闘争にアメコミ的ブロマンスを匂わせる、まさにサンプリング時代の決定版ともいえるバトルアニメの劇場版。「正しい死」へ向かう物語の前日譚。愛と呪いの、否、愛という名の呪いと解放をテーマに、すべては絶望…

ピーターラビット2/バーナバスの誘惑

原作の持つ“残酷性”をバイオレンスに振り切って再解釈し、大人の観客をも熱狂と笑いの渦に巻き込んだアクションエンターテインメントの続編としては、ややハートフルに寄りすぎる。新たにワイスピばりのケイパーアクションを繰り広げるものの、終始、空転を…

鏡の中にある如く

すべてを受け入れてこその愛。崇高で卑俗、愚かしくも美しい愛への確信が神の不在を埋め合わせる。空虚な死、つまり生のよすがとなる希望、信仰とは愛のことである──などと並べ立てる“芸術家”の言葉がそらぞらしく蛇足に思えるほど、なんと艶やかで美しいス…

ムーンフォール

配信スルーもさすがのエメリッヒ節は健在。常軌を逸したディザスター表現に格の違いを見せつけ、臆面もない『インデペンデンス・デイ』の二番煎じがこれまたちょうどいい塩梅の宇宙戦争を盛り上げる。新春、ハルマゲドン映画三連発の締めにふさわしい景気の…

グリーンランドー地球最後の2日間ー

他人を蹴落としてまで生き抜く未来にどれほどの価値があるのだろうかと。自ら死に場所を選べる幸福とその美学に映画的ハイライトを見てしまっては、ジェラルド・バトラーの奮闘も虚しく映る。明日、隕石が落ちて地球最期の時が訪れないとも限らない。そんな…

ジオストーム

環境問題への警鐘が折しもMAGA批判に繋がる、2017年公開のアメリカ映画。温暖化の臨界点まであと少しの現実を思えば、何ら荒唐無稽とも言い切れないディザスターが迫る。政治的解決など望み得ない故、科学者同士の連帯でもって危機にあたる。というコンセン…

FREAKS フリークス 能力者たち

てっきり『ルーム』のような監禁事件ものとして推移していくのかと身構えるも、まったくの思い違い。さながらX-MENシリーズのスピンオフとでも数えられるような、差別や迫害のテーマを下敷きにしたスーパーヒーロームーピーが展開する嬉しい誤算。低予算的な…

2022年の映画生活ベストテン

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う“愛はいつも悲しいが、愛なき人生はもっと悲しい” トイ・ストーリー4“ハッピーエンドのその先に” シン・エヴァンゲリオン劇場版“終劇” ゴーストランドの惨劇“恐ろしくも美しいまでの恍惚” the Future ザ・フューチャー…

ゴーストバスターズ/アフターライフ

天パでメガネのギーク少女に扮するマッケンナ・グレイスちゃんの、まさに“ギフテッド”な才能に魅了されっぱなし。流れっぱなしの劇伴からは、淡い80年代ジュブナイルへの郷愁を思わせる。男女逆転の大胆なアップデートを試みた2016年のリブート版とは対照的…