散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

鏡の中にある如く

すべてを受け入れてこその愛。崇高で卑俗、愚かしくも美しい愛への確信が神の不在を埋め合わせる。空虚な死、つまり生のよすがとなる希望、信仰とは愛のことである──などと並べ立てる“芸術家”の言葉がそらぞらしく蛇足に思えるほど、なんと艶やかで美しいスヴェン・ニクヴィストの撮影、フォール島の白夜。もしくは素晴らしいデジタルリマスターも相俟ってか、やはりベルイマンのモノクロ映画において神秘性を帯びる光と影のコントラストに映しえる人間の深淵、あるいは言い知れぬ狂気に息を呑む。

ハリエット・アンデルセン(『不良少女モニカ』)を当時のミューズに、「神の沈黙三部作」の一作目にして早々にもその存在が定義づけられる。


☆3.8