散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

美しき結婚

ロメールの長回しに映し出される気まぐれな“エゴイズム”の交差。これが、なんと愛らしく豊かな人間描写であろうか。 はやく大人になりたい、けどつまらない大人にはなりたくない。少しばかり知的で繊細なあまり、つい美しく生きたい、非凡でありたいと夢想し…

飛行士の妻

会話劇という演劇性と、映画的な即興性とが結び合うヌーヴェルヴァーグの黄金。パリという劇場を舞台に、恋人たちのフランス語は韻律を奏でるように。街の喧騒を通り抜け、柔らかな陽光を浴びながらその瑞々しくも重層的な悦びにまどろむ。 (そういえば『ビ…

アンダー・ザ・シルバーレイク

隣家に、ヒッピーくずれのヌーディストを覗き見る冒頭にすぐさま『ロング・グッドバイ』を想起する。これが正解。謎に次ぐ謎に意味を与えて全貌を解き明かそうとするミステリーへの欲望を捨てて、ただただブロンド美女の残り香に誘われるままに、Los Angeles…

ザ・グレイ 凍える太陽

『生きてこそ』×『エッセンシャル・キリング』のような、地の果てに抽象化される生と死の対峙。 “思い出”に呪われた男がもう一度、人生を取り戻すための闘いを、観念的に、寓話的に描いたまごうことなきサバイバル・ムービー。 ひとえに、実生活においても最…

カーリー・スー

80's的イノセンスの終焉とともに表舞台を去った青春映画の名手、ジョン・ヒューズ。彼の最後の監督作。 はぐれ者たちの青春を彩ったフィルモグラフィーのラストを飾るのも、やはりはぐれ者の人生に光を当てたロマンチック・コメディー。ただし、スクールカー…

ER緊急救命室ⅩⅤ <ファイナル・シーズン>

物語は終わる。それでも続く人生を共に、それぞれの場所で歩み続けよう。数えきれないほどの忘れえぬ思い出を抱きしめて──。 S1 ep.19 "Love's Labor Lost"S2 ep.7 "Hell and High Water"S3 ep.11 "Night Shift"S4 ep.15 "Exodus"S5 ep.15 "The Storm - Part…

ER緊急救命室ⅩⅣ <フォーティーン・シーズン>

父性の不在は長らく、母性なる愛の庇護も得られないまま戦い続ける“ブラザー”たちの絆。そのナイーブな繋がりを守りぬくために重ね合う思い、募らせる愛と感謝の言葉。そして大粒の涙。 いつわりの正義、まやかしの信仰。打ち砕かれた幻想の傷痕──。いずれ向…

マッドマックス 怒りのデス・ロード

2015年7月某日、立川シネマシティ【極上爆音上映】にて。忘れえぬ映画体験。心臓を揺らすほどの、暴力的なまでの轟音の感触とともに──。 映画的なるものの本質と、その美の復興をはかるべくアクションという表現方法に純粋化されたストーリーテリングは、神…

ER緊急救命室ⅩⅢ <サーティーン・シーズン>

「公助」の不備が社会不安を醸成する。あらゆる対立の根っこにある不安からの恐れ、そして偏見、憎悪の悪循環。 慈悲の心、それだけではもう“止血”しきれないほどに疵だらけのこの世界で、荒廃する人心。 当然のように弱い者から順に切り捨てられるシステム…

ER緊急救命室Ⅻ<トゥエルブ・シーズン>

無常。すべては虚ろ──。 地獄の果てのさらなる地獄で、友が一人また一人と去っていく。 ★4.0

チェイサー

正義と悪の追走劇は数あれど、これほどに切実な、現実的であるがゆえに深刻なシチュエーションもそうはない。それがノンストップ・カーアクションに繰り広げられる悪夢的体験の持続。 恐怖はやがて怒りに変わり、あるいは愛が愛だけに、その裏腹の狂気を目醒…

ER緊急救命室Ⅺ<イレブン・シーズン>

"The Show Must Go On" 僕らが僕らであるために。変わり続ける者だけが変わらずにいられるように。回り道でも、傷つきながらも進み続けるしかない人生のY字路。 「さよなら」は、また会う日までの約束の言葉だ。 ★4.0