散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

かわいい毒草

【町山智浩のVIDEO SHOP UFO】 月曜日、君と出会い火曜日、恋に落ちた水曜日、僕は不実で──木曜日、人を殺める 仕組まれたボーイミーツガールも儚くは泡と消える。 現実に耐え切れず空想へ逃げ込んだ男の用意した“嘘”で、生身の少女の底知れぬ欲望が満たされ…

レディ・バード

愛しくて愛しくて、“死ぬほど”涙がこぼれそう。 美しい世界、素晴らしい人生。あなたの優しさ。いつだって最高のあなた。カーステレオに流れるお気に入りのヒットソングが、声にならない言葉を、言葉にできない感動を歌う。 毛先をピンクに染めて、少し猫背…

シンクロナイズドモンスター

色恋沙汰と世界の終わり。同監督作『エンド・オブ・ザ・ワールド』でも見られた奇想天外なジャンル融合、予定不調和なストーリー展開、再び。 嫉妬や劣等感、肥大化した自我のメタファーとして、まさに巨大化した“モンスター”と対峙する砂場の箱庭表現は、無…

死霊のはらわた

『死霊のはらわた』のリメイクという、どうやったって冷笑に終わることが目に見えている無茶な企画で、まさか一定の成功を収めてしまったフェデ・アルバレスの手腕にまずはアッパレ。後に『ドント・ブリーズ』で脚光を浴びるのも納得の快作が長編デビュー作…

ジグソウ:ソウ・レガシー

リブートと謳われるも、内容としては前作までのストーリーを正当に継承するシリーズ8作目の続編と言って違わないもの。つまり、回を重ねる毎に下降を続けるシリーズの最新作にして、出来の方も言わずもがなの……。 せっかく、原点に倣った、どんでん返しに注…

ポセイドン

古き良き、幸運な、映画の出会い方。たまたまつけたチャンネルにちょうど映し出されたワーナー・ブラザースのオープニングロゴに導かれるように、タイトルも何もわからないまま──舞台は豪華客船。どうやらパニックムービーの予兆──ほどほどのモチベーション…

キングス・オブ・サマー

少年は優しすぎるがゆえに臆病で、ぶつかり合うことなく、分かち合うことなく、望むべくして独りを選んだ。 拳を交える友も。夕暮れに恋を語り合う友も。大人の真似事や危険な遊びを共謀し、共に火傷する友も。冒険に出かけることも、友と、丘の上に立って自…

ソウ ザ・ファイナル 3D

因果応報のサイコスリラーがただのトーチャーホラーに成り下がり、ついにそのグロテスクもコメディーに転倒しかねない、もはや失笑のシリーズ完結編。なんて言いながら、10年遅ればせながらも全作コンプリートしてしまったのは、第一作の衝撃に見合った長い…

ソウ6

フロムダスクティルドーン。一日の終わりは夢の始まり。無論、悪夢とて。 人々が寝静まった頃合い、丑三つ時なんて理想的なシチュエーション。静寂と暗闇に包まれた孤独の一室で、なぜにホラーを、死の遊戯を眼前に、恐怖を欲望するのか。 それは生が死に直…

シンデレラ

保守的であることがすなわち悪であろうはずはないが、愛と知性を持ち寄ってより良い社会を目指そうとする進歩主義が否定される謂れもあろうはずがない。 ただし、正義にかこつけた前時代へのアンチテーゼにはある種の暴力性が内在することに自覚的でなければ…

グランドフィナーレ

映画という魔術的なメディアの。まさしく“マエストロ”というべき天才の。つまりは自殺的な、自作自演の──。 恍惚を呼ぶ映像美の、淀みなく続く緊張と弛緩。構図の妙に絡み合う音楽の官能。 映像と音楽の、その魔術的な言語を理解するのに言葉は要しない。大…

ゲームの規則

ゲームの規則、恋のルール。愛の掟、人の道──。 正直者が馬鹿を見る、世の無情。ブルジョワの群像。憐れな幻想。滅びゆく秩序。狂騒、ほとんど躁。人生は喜劇だ!とは、真っ赤な嘘。 大戦前夜を知ってか知らずか、迫り来る暗黒を目前に。揺らめく風前の灯火…

グッドナイト・マミー

無垢の残酷、愛の残酷。 少年の曇りなき純粋、すなわち狂気にも似た愛の証明にもたらされる悲劇。まるで悪夢、それは誰の目にも明らかな、考えうる限り残酷な結末に違いなかったとしても──。 覚めない夢の中で真実など無意味。 まぶたを閉じれば闇の向こうに…