散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ポセイドン

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古き良き、幸運な、映画の出会い方。
たまたまつけたチャンネルにちょうど映し出されたワーナー・ブラザースのオープニングロゴに導かれるように、タイトルも何もわからないまま──舞台は豪華客船。どうやらパニックムービーの予兆──ほどほどのモチベーションでながら見を続ける。主演のカート・ラッセルと、『オペラ座の怪人』、最近では『コメット』も記憶に新しいエミー・ロッサムの姿を確認し、ソファーに深く腰掛ける。ステージ上の歌姫に目をやればブラック・アイド・ピーズファーギーじゃない!ここで現代人の悪癖、スマートフォンを手に取り検索をはじめ、どうやらあの名作『ポセイドン・アドベンチャー』のリメイク版であることを知る。これまた珍作の予感がするも、もう後には引けず……。

オリジナル版が"Leap of faith" の葛藤に打ち勝つ人間の証明であるならば、今作にそのような力強いメッセージは内包されない。ただし、刻一刻と危機が迫る船内からの脱出を目指して"Keep on movien'" リアルタイムアクションの緊張と興奮は、やはり人の心を熱くするものがある。

今作において、神は人間を試さないし、彼らも祈る暇があれば足を動かし、歩を進める。
なにせタイムリミットは90分。世の不条理を恨んでいる場合ではない。
死が目前に迫った時、選択肢はそう多くない。生きるための要件はシンプルかつ究極的に本質的に。その潜在能力が力強く立ち上がる。


☆3.1