散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

Swallow/スワロウ

籠の中の鳥に安住する一方で、欲求不満の捌け口として、あるいは社会的または生来的な抑圧への反抗として行われる背徳の儀。苦しみ悶えながらも浮かべる恍惚の表情は、痛みこそ生への実感と結びつき、虚しさで覆われる彼女の人生に小さな達成感をもたらして…

ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!

度の過ぎた純粋さに気高さを謳うシリーズにあって、彼らが託す未来への信頼は比類ないものである。およそ30年ぶりの続編が、次世代への継承の物語へと帰結する必然性に膝を打つ。 そして、世界を一つにする一曲など存在し得ないという挫折の先に、しかし音を…

T2 トレインスポッティング

どんな未来を選ぼうとも世界はクソで、俺たちはクズに変わりない。ある種の諦念にシニカルを抱えて浸る現実逃避には、懐古じみた幻想が並ぶ。 “普通じゃない”人生を刹那的に、汚れまみれて生きる愚かさの美しさを教えてくれた不良なる映画への憧憬は、20年後…

ウィリーズ・ワンダーランド

借金完済のためにちんけなB級作品に出続けたニコラス・ケイジの一方で、すでに大金持ちがゆえに奇抜なインディペンデント作品へ好んで出演するダニエル・ラドクリフくんこそ、我らが映画ジャンキーの新たなる希望か。 かれこれろくな映画を見なく、見れなく…

海底47m 古代マヤの死の迷宮

ケージダイビングからケーブダイビングへ。 光さえ届かない暗闇の海底遺跡に鳴り響くは酸素ボンベの残量アラート。点滅する救難信号の赤灯にホオジロザメの大口が迫る。閉所恐怖症でなくともこの圧迫感に窒息感は耐え難い。私的トラウマホラーの『ディセント…

ズーム/見えない参加者

『アンフレンデッド』のSkypeをZoomに更新しただけの二番煎じも否めないが、一方でライド型ホラーとしての一ジャンルを確立したものとも言える。全編PC画面上に繰り広げられる臨場感は、未曾有のロックダウン下に限らず、多様化した視聴環境にうってつけの映…

プロミシング・ヤング・ウーマン

リベンジ・スリラーというジャンルがようやくポルノ的なエクスプロイテーションを排し、真の意味での復讐を試みるエポック。 その怒りや悲しみの、絶望に無力感。“罪なき傍観者”を含めた誰もが共感、あるいは断罪を免れない。誰も彼もが自分ごとであるべきフ…

ゼイカム -到来-

テレビという新宗教の下に分断される世界の縮図を家族の崩壊に見るSF風刺劇。 そのモチーフに加え、官能的にメカニックな造形からはクローネンバーグ 『ヴィデオドローム』の影響を感じたりも。 ☆2.9

ドント・ブリーズ2

アンチヒーローへの嫌悪、もしくは悪魔的な共感との葛藤において、ホラーからアクションへとその様式を変えても尚、本質的なスリラーを持続させる続編。善悪の彼岸にこそ映しえる愛ゆえの所業が、時に孤独の暗黒に光を差し、救いをも齎す。必ずしも善玉の主…

ゾンビーバー

明るいエロに、清々しいほどのバカ。早過ぎる夏の始まりにぴったりの爽やか映画。 『死霊のはらわた』以来のインディペンデント精神を引き継ぐ、ホラーコメディの正統派。技術と情熱、工夫とアイデアで一流にも劣らないエンターテインメントを可能とするB級…

CODE8/コード・エイト

X-MENに倣い、迫害されるマイノリティーの存在を超能力者に託して語られるアンチヒーローもののそれではあるが、良くも悪くもメタファーに終始するSF設定それ以上のスペクタクルには発展せず。 『アップロード』のロビー・アメル、従兄弟スティーヴンとの共…

アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~ シーズン2

富める者たちのユートピア、とはつまりその他大勢の人々に訪れる近未来ディストピア。保守派が革命を企てるねじれは、現代の世相ともすでに重なるアメリカドラマのリアリズム。 ★3.5