散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

Swallow/スワロウ

籠の中の鳥に安住する一方で、欲求不満の捌け口として、あるいは社会的または生来的な抑圧への反抗として行われる背徳の儀。苦しみ悶えながらも浮かべる恍惚の表情は、痛みこそ生への実感と結びつき、虚しさで覆われる彼女の人生に小さな達成感をもたらしていく。それがどうにも身に覚えのあるスリラーとして機能してしまうことには、彼女の心身に移入しうる葛藤を自らも少なからず抱えていることを意味する。

ジェンダー論としてセンセーショナルな表現はもちろんだが、それだけでカテゴライズしてしまってはもったいない、自己決定の可能性と不可能性について根源的な問いを発する。誰もが抱きうる存在の不安を描く、ジャンル映画の様式より到達するその普遍性を見落とすべきではない。


☆4.2