散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

シン・エヴァンゲリオン劇場版

歪んだ母性へのコンプレックス、果たし得ない“父殺し”を託したフィクション。そして何より「人類補完計画」なる幼稚で独善的な誇大妄想へのシンクロニシティが私にとってのエヴァであり、それら全てに救いを与える大団円には、十年という月日の抑鬱を解放し…

Mr.ノーバディ

いわゆる「ナメてた相手が殺人マシーンでした」 映画の最新版。 セックスや暴力に誇示される男らしさとはあえて距離を置くような、乾いたコメディセンスが良い。 『ジョン・ウィック』や『イコライザー』よりも『96時間』を、さらに遡って『フォーリング・ダ…

トゥモロー・ウォー

彼らはいつも未来のために人類を救うが、過去を変える戦いもまた等価に命を賭するに相応しい。端的にそれは家族愛であり、父が娘の未来を想うように、娘もまた父や母とのありうべき思い出を死守する。 『スターシップ・トゥルーパーズ』のようなSFアクション…

JUNK HEAD

どれもこれもどこかで見たことのある映像の焼き直しにしか思えない昨今の映画状況において、圧倒的にオリジナルな世界観を創り上げたのはただ一人の天才のイマジネーションか、あるいは見果てぬ狂人の夢。膨大な細部の積み重ねでしかなし得ないストップモー…

劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明

一体、誰のための、何のための物語と言うのか。幼稚化の一言では説明のつかない、完全に病んだ時代の想像力。「冒険」という言葉にはまるで釣り合わない「呪い」の代償。幼児キャラに強いるアブノーマルな残酷絵がさずかに正視に耐えない。なのに、見届けな…

ローマの休日

可憐なオードリーに見惚れ、忘れがたいいくつもの名シーンを数えながらも、やはり個人的には、無言のラストシーンにこそ20世紀最高の名画たる白眉を見た気がする。 目と目で通じ合う、二人だけの秘密。愛の語らいを静かに見届ける神の視点より、まさしく映画…

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

悲しみの受容における、破壊と再生というテーマに括ってしまえばよくある話のようで、しかし冷静な狂気を演じさせれば今や右に出る者はいないジェイク・ギレンホールの怪演と、導かれるように常軌を逸した展開が他のどの映画とも違うカタルシスを呼ぶ。すな…

アメリカン・スリープオーバー

今なお煌々と輝くあの夏の思い出が、希望のまぼろしを灯し続ける。故にその終わり、その後の生涯にわたり暗い影を落とし続けてもいる。 もう二度と訪れない切実で退屈な日々の喪失をロマンチックに、そして特権的な愚かさをもって描く。珠玉の青春群像劇。そ…

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園

フワちゃんのゲスト出演が示唆的なように、健全な世代交代を経て、ようやく永遠の5歳児に時代が追いついた感じ。それこそエリート教養的なアップデートなど要するまでもなく、しんちゃんはしんちゃんらしくあるがままにいつも優しく、楽しく、今をモーレツに…

ゾンビの中心で、愛をさけぶ

「愛しているなら、殺して!」 閉鎖空間の狂気、真に恐ろしいのは人間の本性と、モダンゾンビの定石を踏みながら、確実に訪れる“世界の終わり”に考えうる限り最もロマンチックな結末を与えるラブストーリー。 分かち合えない痛みならば、同じだけ僕も傷つこ…

魔女の宅急便

元気で明るい女の子。その純真さゆえの“魔法”を失い、痛みを知って大人になる。人の醜さ、悪意なき残酷に触れ、一方で紛れもないやさしさにも包まれて、その複雑な社会というものの自らも一員となるべく通過儀礼。労働によってのみ迎え入れられる世間にもま…