散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

20センチュリー・ウーマン

いくら教わり学ぼうとも客体的ならざるを得ない、決して“私”にはなり得ない僕らの、男の語る女性性など。むしろフェミニズムに雄弁なほど、欺瞞さえ入り込む危うさに怯えながら、所詮は実感とは程遠い机上の論に疎外感を覚えながらも、しかし時代の要請にお…

パターソン

忙しない日常のすき間、モノクロームの世界を彩る思索に耽る。言葉の世界に救いを見出す我々(誰しも)詩人の営み。ルーティン。代わり映えしない日々の繰り返し、何が起きるでもない、しかしこの穏やかな時の流れを噛みしめるように。韻を踏むように、同じ…

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー

いつしか、あるいは元来、はたまた決定的な絶望を知って、書くことが生きることに同義となった“作家”の孤独。いや孤高。寂しさや悲しさがゆえに美しさを手にする芸術の理、その極北をいくような隠遁生活の悦楽というもの。内なる声をストーリーに紡ぐ、真実…

ウォーク・トゥ・リメンバー

すべての恋はロミオとジュリエット。運命に逆らってこそ、そしてまた運命に引き裂かれてこその悲しい物語。愛の終わりがいつもそうであるように、しかし愛なき人生の虚しさよりは悲しくも美しくあるように。 一生分の夏を生きた。 あの頃。 ☆4.2

スラムドッグ$ミリオネア

いつかきっとまた君に会える。 夢か幻か、はたまた愛とも呼ぼうか、あまりに過酷な現実を忘れさせ、あるいは運命という名の意味を与えるそれは虚構への熱狂。その残酷な光の明滅に、しかしながらどうしようもなく切実に、この世の地獄を生きるただ一つの答え…

ワールド・ウォーZ

ゾンビスペクタクル。ペプシコマーシャル。エポックになり損ねた珍作も、一周まわって見せ場見せ場の継ぎ接ぎを大いに楽しんだ。 あの頃。 ☆3.8

透明人間

恐怖とは本質的に見えないものであり、映画とは本質的に見るべきものであって、見えないものを映し出すまさしく恐怖映画的なるものの新たなるクラシックが、再び「透明人間」の名を冠し現代に甦る。 エリザベス・モスの主演に意味するところ現代的なフェミニ…

ブリーダー

レフンの『トゥルー・ロマンス』か。 ヴィヴィッドな色彩感覚にせよ、バイオレンスにロマンティシズムの共存する危うさにせよ、作家性の萌芽を感じさせる初期作。暴露される映画オタクの生態が微笑ましいやら、苦々しいやら、何とやら。 レンタルビデオ店の…

サランドラ

美しくない『悪魔のいけにえ』といった具合の田舎ホラーは、異形の”家族映画”としてのカルトクラシックでもある。 砂漠の荒野に鳴り響く絶叫、人ならざるものの咆哮ときて、銃声に爆発の大音量が耳をつんざく。ホラー映画もさすがに見過ぎればある程度の恐怖…

妻、小学生になる。

失ったものを見つめて生きるにはこれからの人生、長すぎるよ。 悲しみに打ちひしがれ、呆然と立ち尽くし、しかし失った過去と残された未来との圧倒的な非対称性に、たとえゾンビのようでも生きながらえてしまう私たちのどうしようもなく続いていく平和な日常…

ミステリと言う勿れ

人に出会い、人に傷つき、誰もが通りすがりの日々を独り生きていかねばならない恐怖と不安。永遠の孤独を知っていくばかりの旅路にあって、それでも「生まれてきてよかった」と。心からそう思えるような幸せなときが、数多忘れられない悲しみの向こうにこそ…

ホテル・アルテミス ~犯罪者専門闇病院~

新たな世界観の構築がSF映画の成否ならば、本作のようなクライムアクションの寄せ集めに感情を揺さぶられることなどありもしないが、この無感動こそ求められるジャンルムービーの魅力も否定できないのである。 アメリカは戒厳令下のロサンゼルス。2028年とい…