散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-01-28から1日間の記事一覧

ネイキッド

切っ掛けは、キアヌ・リーヴスの94年No.1作品との触れ込みだったか。ジョニー・デップが100回観たとの噂を目にしてだったか。即興演出を主とするマイク・リー作品。とすれば、“ノストラダムスの予言”も“黙示録”も、デヴィッド・シューリスの口から出まかせな…

ショーン・オブ・ザ・デッド

ゾンビ映画の金字塔をブリティッシュ・アレンジ。エドガー・ライト、サイモンペッグ、ニック・フロストのボンクラトリオによるゾンビ愛は、ロメロ・ゾンビのイズムを正当後継する。 いくつになっても冴えない29歳のショーンは、小学校からの親友で無職のエド…

東京ゴッドファーザーズ

写実的に描かれる街並み。その実、室外機が驚いていたり、建物が泣いていたり、笑っていたり、サブリミナルな仕掛けが背景に施される東京散歩。虚構性、リアリズム、映画の“嘘”と“本当”がいっしょくたになって滲み出る情緒。 「健気とさえいえる真面目な努力…

SWEET SIXTEEN

恋愛だけがラブストーリーじゃない。 もうすぐ16歳の少年の願いは、星の見える湖畔のコテージに母と姉と甥っ子たちと、家族揃って暮らすこと。当たり前にあるはずの、ささやかな安らぎの場所を手に入れることが、たった一つの彼の夢。 雨の町。叶いかけた願…

ぼくのエリ 200歳の少女

ひとりぼっちのオスカーの前に降り立った、裸足の“少女”エリ。原題は、ヴァンパイアは家人に招かれて、初めて足を踏み入れられることから。 雪の降り積もるスウェーデンの郊外。トーマス・アルフレッドソンの端正な、寒々しく冷気の通る映像に、挿入される生…

テイク・ディス・ワルツ

いつの間にか薄ぼやけてしまう未来への視界に、新たな幸せへの幻が映り込む。どこかで会った気がする“あなた”は、いつか失ってしまっていた情動。 過ぎ去っていく時の、その一瞬にも、切なさと戸惑いを感じ取ってしまう彼女。いくらかは満たされていても、ほ…

メランコリア

“あらゆる夢の中で最も麗しい夢への記念碑” ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」が轟く。 鬱病期のトリアーが構想したユートピア。既に精神が崩壊し、不幸のどん底にある鬱病者がディザスターにパニックすることはなく、寧ろ安堵を覚えるだろう。煩わしい…

ラースと、その彼女

26歳の心優しいラースは、一人孤独に暮らしている。優し過ぎるという、弱さ。人を傷つけることに怯え始めると、他人を遠ざけ、自ら孤独を選んで生きるようになる。元宣教師でブラジルとデンマークのハーフの新しい恋人ビアンカは、リアルドール。体温を感じ…

卒業

‘ハロー、ダークネス。我が友よ’(The Sound of Silence - Simon & Garfunkel) 黒のサングラスは、虚像を見透かすアウトサイダーのアイコン。 メインストリームからのドロップアウト。欺瞞に満ちた“プラスティック”な社会に朽ちてゆくのは御免である。あなた…

鬼火

「人生は僕のなかであまり早く過ぎて行かない。だから速度を早めよう」 虚無という名の死に至る病に苛まれる青年、と言っても、もう若くはない30代を迎えた男。誰も僕を助けられない。理性の限りを尽くし、こうする他ない。チェックメイト。 自死を心に決め…

ONCE ダブリンの街角で

‘君はどんどん変わっていってぼくは追いつけなくなったもう少しゆっくり変わってくれたら君の嘘がぼくにも分かったのに君の嘘でぼくたち終わってしまうって’ とある“Guy”の誰も聞いてやしない歌を、とある“Girl”は立ち止まって聞いてくれていた。 劇中音楽は…

フローズン・タイム

ファッションフォトグラファーのショーン・エリスが、静的に、止められても戻すことはできない“時間”をクローズアップする。 失恋のショックで、感情がクラッシュ。不眠症の末に、時間は止まる。静止した世界に感情を取り戻すための唯一の活路は、恋、リビド…

アフター・ウェディング

シガー・ロスの魂から絞り出されるように切実なボーカルが、涙腺を刺激する。ウェディングという最も祝されるべき宴は、不都合な真実が露見される場に相応しい。 顔の表情が読めないほどに近付き過ぎるカメラは、溢れる涙の粒を繊細に、瞳の動きをダイナミッ…