散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

鬼火

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「人生は僕のなかであまり早く過ぎて行かない。だから速度を早めよう」

虚無という名の死に至る病に苛まれる青年、と言っても、もう若くはない30代を迎えた男。
誰も僕を助けられない。理性の限りを尽くし、こうする他ない。チェックメイト

自死を心に決め、旅立ちの挨拶に旧友たちの住む街へ帰る。
過去を断絶させて新しい生活に適合する旧友。君らの“平凡な確信”には、うんざりする。

生きてるものはいないのか。

若さが享受すべき青春の“黄金の十年”は、十分に謳歌した。
感覚は逃げ、もう何も感じない。美しい君が目の前にいるのに、触れる方法がない。
何かを待ち続けることも空しくなった。
僕は嘘をつくことをやめる。虚偽の世界に生き場所はない。せめて高潔で在りたかった。

“僕は死ぬ。君らは僕を愛さなかったし、僕は君らを愛さなかったから。僕らの関係は元へ戻らないからだ。僕は君らに消えることのない疵を残すだろう”

僕は愛されたかった。僕が愛するように。


☆Review

(2016/08/29)