‘君はどんどん変わっていって
ぼくは追いつけなくなった
もう少しゆっくり変わってくれたら
君の嘘がぼくにも分かったのに
君の嘘でぼくたち終わってしまうって’
とある“Guy”の誰も聞いてやしない歌を、とある“Girl”は立ち止まって聞いてくれていた。
劇中音楽はすべて主演するミュージシャンの二人が作曲。
後の二作で独自の音楽映画手法を確立させている監督のジョン・カーニーも、人気バンドの元ベーシスト。
口コミによって拡大公開に至るブームを起こすが、元々は低予算の処女作。
町中を望遠レンズでゲリラ撮影したり、パーティシーンは友人宅を使用していたりと、音楽家たちとダブリンの街の等身大が瑞々しく描写されている。
地元のストリートにとある男が掻き鳴らす、穴の空いたギター。チェコからの移民で一児の母である女が、楽器屋に通っては弾く鍵盤。
口づけすら交わさずとも、幾度もセッションで通じ合った愛の交歓。
たった一度の煌く日々をレコーディングに結晶させる。
☆Review
(2016/08/29)