散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

スター・ウォーズ/最後のジェダイ

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"FORCE"を"HOPE"と読み替えた『ローグ・ワン』を踏まえて、その再定義を確固たるものにすべくカノンに訪れた分断のとき。新旧の接合を図り、“新たなる希望”を見事に引き継いだかに見えたエピソード7への喝采は、賛否両論、大論争の渦と成す。まさに、聖典を焼き払う行為。凡才が神話を改変しようなどという暴挙。まさしく。だが、苛烈を極める批判に首肯しつつも、それでもこの凡作を愛さずにいられないのは、やはり抗えない宿命に殉じた名もなき英雄の物語に他ならない故である。端から、凡人たちの負け戦である。持たざる者たちの敗走の風景である。しかしそれは不可避とも言える、時代の要請。対立の構図があまりに雄弁に指し示す、最善にして惨憺たる世紀の問題作。天才なき衆愚時代の、まぎれもない我々世代の物語なのである。

「この銀河には伝説が必要だから」

我らが主人公、レイに託されたその言葉が、鈍重で冗長な映画全編をクライマックスの如きエモーションで包む。アンビバレントを抱えながらも、とめどなく溢れる涙を禁じ得なかった。
すべては希望の灯を引き継ぐための、やるかやらぬか、やらねば死ぬかの一本道。さりとて、若き選ばれざる者たちの、無謀な挑戦が宇宙のもくずと消える必然。それでもきっと、何処かの誰かには届きますように──夜明けの来ない闇の彼方に、希望の火花が散りますように──星屑に象られるいくつもの伝説が、夜空を見上げる子どもたちの未来を希望で照らしますように。
光なき時代に、僅かな光を守り抜く撤退戦。勝利なき戦いへの決意こそ、まぎれもない私たちの物語に違いないのであった。

旧三部作への憧憬やノスタルジーは、私の夢でも何でもなかった。あるいは『フォースの覚醒』とて、誰かの思い出が私の“希望”となり得るはずもなかったろうに。ありもしない地平線に幻を見ていたのは私たちの方だった。
夕日は沈み、夜明けは遠い。影の時代を生きた子どもたち──またの名をプリクエル世代とも言い得ようか。


☆4.3