散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

さよなら、僕のマンハッタン

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「最良の者が信念を失い、最悪の者が活気づく」とは詩人イェーツが綴り、今は無きボトムラインのステージにてルー・リードが引用した言葉。

雨の街角に男と女と愛の言葉が行き交う夜。音楽は鳴り続け、踊り続ければ愛し合うロマンティックの住人たちの物語で街は溢れ──"Soul"で満たされていたのも今は昔のまるでフィクション。

それは愛かたんなる思い込みか、あるいは思い込みこそ愛の正体に冷めてしまったか。または愛情と友情と、同情すらも区別がつかずに熱病に浮かされ溶けてしまうか、21世紀はニューヨークの異常気象。

野蛮な愛と幻影だけが遺された街で。無難、凡庸、退屈、そして無関心といったまるで場違いなはずの言葉が、恐怖が、その街の子供の心に巣くう。

こんな時代に、純真と、もしくは世間知らずと笑われる子供たち。
ロマンティックの恋人たち。
それでも言葉を紡ぐこと、自ら演じ続けることの他には生きる術を持たない、愛に毒された子供たち。
より刺激的に、よりミステリアスに。作為的にして無作為、悲劇的にして喜劇的な人生と冠する物語をしたため、夢見がちな愛の戯曲を歌う詩人。その卵たち。

愛がいつも遅れてやって来るのは、愛が秘密に隠されているから。わざわざ秘密に愛をこしらえるのは、なんてことない彼らの作家性。つまり若さ、ゆえの才能。それは、あなたとの未来がいつまでも続くことへの願いに他ならない。

物語はつづく。
愛が言葉を見つける日まで。
現実が夢を追い越すその日まで。


☆3.8

The Only Living Boy In New York

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