人々を、あるいは国家を繋ぐ歴史、伝統という“虚構”の語り部について、未来の新たな客観視点より再構築し、そして映画というさらなる虚構のまなざしによって“真実”というものの多層性を浮かび上がらせる確かな試み。
異様なる不穏を漂わせながら、繊細かつ坦々に音階を刻むミカ・レヴィの劇伴に揺蕩い。
美麗なるナタリー・ポートマンの演じ分ける、ファーストレディとしての気品と、妻であり、母であり、一人の人間としての苦悶の表情。微笑みの裏側にある不安と、悲しみと共にある怒りをクローズアップで追うカメラは同時に、彼女のバックショットを神々しい光の中へと包み込む。
高潔なる「美」への追求が、“信じるに足る物語”を紡ぎ上げる。
☆3.6