散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ねらわれた学園

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ねらわれたのは学園の自由──。

自由からの逃走。

ゲシュタポをモチーフとしたコスチュームを纏い、自警をはじめる生徒たち。生徒会という民主的な手続きを経て、全体主義化していく“普通”の学園は、ジョージ・オーウェル1984』的世界観をも思わせる。

大林映画は常に反戦映画であるという、そのフィロソフィーは、こんな学園モノのプログラムピクチャーにまで一貫していたという発見。
まるでアイドル映画に似つかわしくない、「戦争」そして「平和」への唐突な言及が今となっては印象に残る。

一方で、そのアマチュアな映像表現と、書き割りの背景にカオティックな(『うる星やつら』を想起する)モブ演出の、その斬新で古臭い虚構性。そして薬師丸ひろ子の少女性。その時代性には、気恥ずかしくも愛おしいある種のノスタルジーを喚起する。強烈な青春映画の芳香に誘われ、たとえ自分の知り得ない過去の風景にもタイムリープするかのよう。


☆2.9