散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

アップグレード

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人生を襲うまごうことなき絶望に際し、その過酷な現実と人間らしく戦い続けることと、平和な仮想世界に死んだ心で耽溺することの二者択一を迫られたなら、後者を選ばないとはとても言えない。

もはやそんな選択肢が机上の空論でもなくなりそうな時代。

新しきはごく一部の細部を彩り、古き、廃れゆくものたちが街の風景の大半を占める。
最先端テクノロジーオールドスクールなる幻影が混在する近未来像のリアリティー

見えない戦争が殺伐とつづく現代社会に、2045年のシンギュラリティはむしろ待望されるかの如く、AI覚醒のXデーは日に日に現実味を帯びる。あるいは、従属することを本来的に欲する人類の歴史を鑑みれば、自ら進んでその支配権を譲ろうとしているようにも見える。

自由も民主主義にも疲れ、その代償にも傷つき果てた人類の選択がもしそうであるのなら、そんな堕落も受け入れざるを得ない。安らかなる滅亡へ。


☆3.8