散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

日本沈没

f:id:eigaseikatsu:20200722164042p:plain

思考実験、文明論としてのハードSF。その帰結としてのヒューマニズム。そして人間の無力。

ゴジラを上回る自然災害のカタストロフィが日本列島を襲う。その“虚構”に映し出される恐怖と絶望の光景は、公開から半世紀の現在により真実味を増して訴える。

○○年以内に○○%……といった数々のシミュレーションを聞いて久しい。
しかし専門家の警鐘を為政者は聞き流し、それを見て見ぬふりの国民。
問題は先送り。過ちは、なかったことにする。そして誰も責任はとらない。知らぬ存ぜぬでやり過ごすこの国の危機管理に、浮かび上がる「神風」の文字。

責任放棄の他力本願が根付いてしまったこの国民性に、残されたプランはただ一つ。

「何もしない」ことである。

あの、未曾有の震災を経てもなお、変わることができなかったこの国の近未来が決して明るいはずはなく。その自明性さえも直視せず。長い間ゆっくりと、そしてもはや加速度的に沈没していることも知らないことになっている──今やそんな“我が国”の何を憂うと言うのだろうか。


☆2.9