散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

オリ・マキの人生で最も幸せな日

f:id:eigaseikatsu:20210714184057p:plain

16ミリのモノクロフィルムに揺らめく川面はきらきらと輝く。視線の先には仲睦まじい老夫婦の微笑み。負け犬ボクサーとその彼女の未来をまるで祝福するかのように。敗北の先に見る景色の中にこそ、人生で最も大切なその一瞬は映り込むものなのだろう。

古き良きヌーヴェルヴァーグへの憧れを隠さないパスティーシュ古今東西数あれど、60年代の空気感と合わせてこれほど忠実な再現を他に知らない。恥ずかしながら、何の疑いもなく当時の映画だと思い込んで見てしまっていた身からして、そう評せざるを得ないだろう。


☆3.2