散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

正午から3時まで

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音楽が終わり
耳に残った歌
それは瞬き
けれど 長い口づけ
愛はついえ
優しさはたゆとう
思い出は終生
私を温める

出会いと別れのつかの間の甘美。
なんて美しい、恋の詩だろうか。

正午から3時まで。出会いから別れまでのその間、つかの間の永遠。永遠の瞬き──。人生がはじまり、そして終わらせてしまいたいほどの幸福。至上の夢物語が綴られる。

演じるは、チャールズ・ブロンソン&ジル・アイアランド。夫婦共演シリーズ第5弾にして、ついにたどり着いた恋物語の“傑作”。
可笑しくて、可笑しくて、なのになぜだか泣けてくる愛の交歓。愛しくて、愛しくて涙が溢れるくらいの──このとき結婚9年目にして実の妻に見惚れるまなざしの初々しいこと。終始にやけ顔のブロンソンと、それに応えるジルの熱い口づけもまた──愛が溢れすぎている。甘く、儚く、切ない、恋の、真実の刹那が虚実を凌駕してしまっている。

映画という虚構に遺された愛の記憶。文字通り、終生に続く夫婦共演の思い出は、覚めない夢となって語り継がれる。


☆4.0