散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

COMET コメット

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ミスター・ノーバディ』と『メッセージ』と『ブルーバレンタイン』と『(500)日のサマー』と『ワン・デイ 23年のラブストーリー』と『ビフォア・サンライズ』と『ラ・ラ・ランド』と『恋に落ちる確率』と……と、嘗て束の間の夢に見た“美しい夜”の数々が、時の流れに抗う映画に呼応して、今この瞬間、記憶という内宇宙に重なり合う。

思い出は時系列を無視して、意味や感情で結ばれる。“全ての今”が何層にも重ねられた記憶の瞬間。そこへ時間の芸術である映画が交わり、すでに終わった愛の記憶は物語へとカタチを変える。その物語が、結末のない物語だとしたら──。

愛は時間に滅ぼされもするが、愛の記憶は時間を超越もする。

時間が止まればいいのに──そう願ったのは、未来を恐れる彼かはたまた愛を信じる彼女の方だったか──そう願うとき、時間は止まっている。
一瞬でもあり永遠にも感じられる、星の瞬きのような。始まりも終わりもないパラレルユニバースの明滅に現実の続きを夢見ている。

夢も現実の一つと。
忘れ得ぬ過去と未完の物語を繫ぐもう一つの“今”を生きている。

人生最大の幸運と不運。
愛は命を救うが、その人生を奪いもする。


☆4.4

(2018/12/28)