散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

エイプリルの七面鳥

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ニューヨーク、その大都会の片隅に。素直になれず不器用にしか生きられない娘の、最後のたった一度だけのある決心について。

道端のロケーションや自然光に、ヌーヴェルヴァーグの息吹を仄かに遺すような揺れる手持ちカメラが見つめるのは、誰にでも抱え得るとっても素朴な葛藤、そして願い。和解を目指す母娘のドラマは、パトリシア・クラークソンの“お母さん”の名演により、いつしか誰しもの心に眠る母への記憶が重なり合う。
会いたい、でも会えない人への健気な想いに優しくさりげなく寄り添う小品。

最良の思い出が一つあれば十分すぎるくらい。忘れたくなくても忘れてしまうものだけど、忘れようとも忘れるはずがない記憶がある。いつかの愛の瞬間が家族を繋いでいる。
自分の愛に向き合うこと。認めること、受け入れること。伝えること、分かち合うこと。愛するということ。
ありがとうと、ごめんなさいと、さようならを。

あぁ、こんな映画と巡り会うために、何度となく救われるであろう映画と出会うために、たくさんの映画を観続けるんだろう。


☆4.6

(2017/3/03)