散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-02-08から1日間の記事一覧

ボヴァリー夫人

ミア・ワシコウスカ。フォトジェニー。ポルノグラフィが喚起し得るエロスを凌駕するシネマトグラフの甘美。眼福。至福の時間。 個人的な感傷もある。まるで超新星のように、眩い光で人生を照らし瞬く間に燃え尽きた初恋の日々を追想させる。白い肌に、クッと…

セルフレス/覚醒した記憶

「質問が間違っている」 相対的に頭脳明晰である者が下位の者を懐柔してしまう“論理”の暴力性。対し、抵抗する者が行使し得る“実力”の暴力性。人と人が相対するところに必ずや生じている支配関係。厳然たる格差世界のリアルを捉えたアクション。 他方、“永遠…

スーサイド・スクワッド

堅固な壁と砕け散る卵があるとすれば、私は常に卵の側に立つのである。後出しの判官贔屓でも、そういう性分なのだから仕方がない。少数派の、アンノーマルの、ダークスターたちの肩を持ちたがる。 スーパーヴィランとは名ばかりの半端なはぐれ者たちが、如何…

ソフィー・マルソーの秘められた出会い

毒にも薬にもならないが、眠れぬ夜を慰める“クスリ”にはなるワンナイトラブストーリー。 橙の香りに抱かれ。心に秘めた“存在しつつ存在しない”もしもの世界線の“幻覚”が駆け巡る。記憶は消せない。つまり永遠の。始まらなかったが故に終わらない物語。 すべ…

ヤング・アダルト・ニューヨーク

ドキュメンタリー、フィクションのいずれにおいても主体は自分から対象、またその逆へと流動する。撮る撮られる、撮らされているの境界など曖昧なものだから。私的であることがつまり人間的であることであれば、客観的な他者への視点と同様、それは普遍性を…

教授のおかしな妄想殺人

下劣で醜悪なこの世界の現実に絶望した者が耽る“言葉による自慰行為”。“死に至る病”に侵されながら日々やり過ごすための“オーガズムという鎮静剤”。 哲学とセックス。 リビドーを駆動とする書き手はどこまでも書き綴れる。ひらめきを齎すミューズを次々と選…

ラ・ラ・ランド

ライアン・ゴズリング×エマ・ストーン。マイベストの主人公&ヒロイン像と、オマージュされる『シェルブールの雨傘』はオールタイムで特別な一本。 奇跡のような組み合わせの映画に懸念された、前作ではどうにも合わなかったデイミアン・チャゼルの音楽的な…

X-MEN:アポカリプス

サイレントマジョリティーを扇動する歌よりも、サイレントマイノリティーを救う物語こそ尊いことは自明である。一方は宗教的であり、一方は道徳的たり得る。 人の世には常に差別、迫害が蔓延る大前提をベースに謳われるサーガに強い当事者性を免れない。その…

キング・オブ・エジプト

キラッキラでペラッペラな世界観。神と人と、巨大な建造物との狂った遠近感が案外ドラッギーでクセになる。縦横無尽、重力を物ともせず想像の翼を広げっぱなしに、ガリレオ・ガリレイすら飛び越える嘘だらけのファンタジーに、最早、あっぱれ。 「運に賭けろ…

グランド・イリュージョン

推理モノにおける事件のための事件。暴かれるための完全犯罪。タネ明かしのためのトリック。娯楽のための娯楽。 ジェシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソン、マーク・ラファロにメラニー・ロラン、そしてモーガン・フリーマンと、画面を彩る豪華キャスト…

それでも、やっぱりパパが好き!

「アイラブユー」に繋がれた家族。パパが好き。だってパパは友だちだから。非日常が連続する子ども同士、愉快で優しいマイメンだから。 しかし愛ではままならない日常。 務めを果たせるのは、躁鬱の狭間のひとときだけ。自立できないパパの無責任を支えるべ…

グースバンプス モンスターと秘密の書

書に宿るイマジネーションが“飛び出す”、絵本のように。『ジュマンジ』や『ザスーラ』などと同じ棚に並べ置きたいジュブナイル。 現実逃避の先であり、現実に立ち向かう知恵や勇気の拠り所でもある“物語”という魔法の悪魔的なまでの力とその呪い的な側面。 …

ジャングル・ブック

“本物”の人間の前を闊歩する“偽物”の象の群に畏怖の念を抱いた時、確信に至った。技術革新による映像表現の発明の系譜に連なる、『アバター』以来のエポックメイキング。『ジュラシック・パーク』で初めてブラキオサウルスを目の当たりにした時の衝撃を思い…

ギリーは幸せになる/ギリー・ホプキンズの不機嫌な日常

ハッピーエンディングを期待するな。だけど人生に絶望するな。 全方位的に当たり散らす“KOKOU”ならざる“KODOKU”な少女は、成長するには欠かせない適当な喪失を経験する。人並に幸せになるために、思春期における健全な通過儀礼。 ※「イイ映画は寝ててもイイ…