散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ラ・ラ・ランド

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ライアン・ゴズリング×エマ・ストーン。マイベストの主人公&ヒロイン像と、オマージュされる『シェルブールの雨傘』はオールタイムで特別な一本。

奇跡のような組み合わせの映画に懸念された、前作ではどうにも合わなかったデイミアン・チャゼルの音楽的な感性(ジャズ解釈ではなくストーリーテリングにおけるリズム)とも今作においては共鳴。
それは言わば一人称のソロであった前作に対し、男女のアンサンブルが生み出す化学反応。愛すべき二人の夢追い人と両者のやり取りに流れる甘美なる“間”。映画の魔法の領域。
神の視点に留まっていられないほど役者の視点に引き寄せられ、余白だらけの物語にまんまと人生を補完し没入していった。

チャゼルの無邪気な映画愛。シネスコに投影される「ロマンティック」。色鮮やかなノスタルジー

‘愛よ、去らないで’
愛はなくならずとも、彼女は去り行く。
一緒に過ごした日々以上の終わらない思い出を遺して。
夢に生きようとも、現実を歩もうとも、彼は彼女の刹那を通り過ぎるばかりの運命。

運命を愛するとは、過去にも夢を見るロマンティシズム。
過去も、あり得なかったもしもの未来も等価にある今を踊る。
人生は夢現の物語。

いつかはピアノを弾けたこともあったロマンチストは涙を禁じ得なかった。


☆4.7

(2017/08/19)