散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-02-04から1日間の記事一覧

夜の訪問者

監督は007シリーズの初期作でおなじみのテレンス・ヤング。さらに、漢チャールズ・ブロンソン主演とあらば、例に漏れず男性中心世界の臭気がムンムンと充満する。添え物、あるいは邪魔者扱いされる“奥”さまは、パートナーとして何とか男たちの命の駆け引きに…

怒りの山河

マッド“ハンター”、怒りのデス・ファーム。 衝動的で厄介な感情。しかし、正義、抵抗、不屈の精神を下支えするに不可欠な感受性。至極まっとうな怒りの発露により、男は復讐の鬼と化す。 法が裁かない巨悪ならば、我が手で葬るより仕方がない。シンプルなヴ…

シングルス

ご機嫌なギターリフが都会の恋愛群像の幕を開ける。シアトル発のグランジシーンを反映させた選曲と、コメディセンスは、キャメロン・クロウ作品で一番波長が合ってグッドフィーリングな感じ。まったく、愉快に、「ロック(&ロール)させやがる」映画だぜ。 …

狼の挽歌

チャールズ・ブロンソンとジル・アイアランドによるラブ&ヘイトの夫婦芝居シリーズの歴史を追走するスタート地点として今作を再見。 改めて印象的なエンニオ・モリコーネのメインテーマと組み合わされるエッジの効いたカット割り。空撮のロングショットから…

好きにならずにいられない

何かを得るためには、何かを捨てなければならない。何かを成し遂げることのできる者は、捨て去ることを厭わない者だ。好きになっては愛さずにいられないその男は、何も捨てることができない。忘れられない、見捨てられないことだけを見つめてきた瞳の色は変…

トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン

所詮、言語を扱う奇異な動物に過ぎない人間たちの殺し合いの世界。神の不在、性善への不信が極まった悪夢から逃れるべく、人は狂気の世界にふける。狂人を装わなければ、本当の狂気に落ちてしまう。演じることに精力を費やせば、攻撃性は失われ、恐怖や怯え…

愛の残像

初めてのフィリップ・ガレルは、まだ何も映画を知らない頃に見た『内なる傷痕』だった。彼のことがよくわからなかったが、わかりたいとは思ったし、いつかわかる日が来る気がしてならなかった。あれから数年、歳を取った分か、向こうから歩み寄ってきたのか…

イリュージョニスト

所謂、“絵がよく動いている”アニメーション。基本的にフィックスで固定された構図は、前面に展開される各々ユニークなキャラクターのドタバタから、淡いノスタルジックな背景のその奥の方の些細な動きまでを際立って見せる。全体が動かないことで、動いたこ…

ハッピーエンドが書けるまで

“痛みを覚えた。彼女を見ると心が痛む”ビートルズの「夢の人」が流れるんだ。運命を信じる、絶対的なロマンチストの冒頭。 シニカルに、相対的なリアリストのふり。人生は早送りに過ぎて、墓へ行くだけ。生殖だけ。あとはお金も政府も宗教も家族も、全部社会…

バレエボーイズ

映画みたいな現実をそれらしく装飾してまとめてみたところで、その物語の深層に触れることはできない。対象を役者と履き違えてしまっていて、明らかに演出過多。想定したプロットの域を出ない、よくできたドラマのダイジェスト版でしかない。せっかくの密着…

みじかくも美しく燃え

幸せかい?との問いかけに、言葉にならないほどの、駆け出したいくらいの幸せだと心の中で唱えた。柔らかな陽光に包まれ、蝶を追って野原を駆け回る二人。木漏れ日の陰をクマやウサギやと笑い合い、少女とてんとう虫と戯れる午後。すれ違いざま、何気ない瞬…

星の旅人たち

「人は人生を選べない、生きるだけ」自分探しの“道”を歩むだけ。与えられた生を如何に全うするか、それだけだ。 道を歩けば人とすれ違う。食卓を囲めば語らい、他人事の小話に世界の広さを知る。一人になろうとしようとも、その道は孤高でもなんでもなく、多…