散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

愛の残像

f:id:eigaseikatsu:20190204023749p:plain

初めてのフィリップ・ガレルは、まだ何も映画を知らない頃に見た『内なる傷痕』だった。
彼のことがよくわからなかったが、わかりたいとは思ったし、いつかわかる日が来る気がしてならなかった。
あれから数年、歳を取った分か、向こうから歩み寄ってきたのか、そんな日が来たような。まだ深淵は遥か先にあるのかもしれないが、今作においては、自分とまるで同じようなボキャブラリーに体系化された世界観がレンズ越しに見られた。

「美しい別れなんかないよ。去る者と涙を流し足を止める者がいるだけ」
「本当に激しく愛し合えば一つになれる。愛が終わればその存在が消えるだけ、誰も涙を流さない」

永遠を希求し、合一に向かう愛は悲しい。
血を流して、愛は死ぬのが物の道理。
月並みの幸福に逆らって、不変の絶望と眠る。

純粋性に希望を見る、ピーターパン・シンドローム。小犬のような、臆病で嫉妬深い不安症の運命論者か。
神童は恐るべき子供のまま、愛の残像をリライトしている。
彼とは同根の愛を患っている気がしてしょうがない。


☆3.7

(2017/4/11)