散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

バレエボーイズ

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映画みたいな現実をそれらしく装飾してまとめてみたところで、その物語の深層に触れることはできない。
対象を役者と履き違えてしまっていて、明らかに演出過多。想定したプロットの域を出ない、よくできたドラマのダイジェスト版でしかない。
せっかくの密着取材のライブ感や意図せざる化学反応を捉えるシーンはほとんど見受けられず、ドキュメンタリーが可能にする跳躍の瞬間はなかった。

ただそれでもノンフィクションの登場人物たちは確かに年齢を重ねるわけで、少年期から青年期への成長記録は本作が辛うじて辿り着く一つの帰結と重なる。
悪く言えば紋切り型、良く言えば普遍的な思春期の悩みを切り取る。

“バレエ”であるところは交換可能。学校の外側に作った別の居場所で学ぶ、人と変わった「好き」の取り扱いについて。同調圧力から脱し、自分のために生きるとは、延いては自分とは何かのアイデンティティーを築き始める。
ボーイズたちの“女々しい”ホモソーシャルの話に収斂してしまうとしても、その視座は真っ当。あるいは凡庸。
月日の経過と、不確かな夢のために変質する友情の物語。


☆3.2

(2017/4/04)