散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ハッピーエンドが書けるまで

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“痛みを覚えた。彼女を見ると心が痛む”
ビートルズの「夢の人」が流れるんだ。
運命を信じる、絶対的なロマンチストの冒頭。

シニカルに、相対的なリアリストのふり。
人生は早送りに過ぎて、墓へ行くだけ。生殖だけ。あとはお金も政府も宗教も家族も、全部社会的幻想に過ぎないと。
なのにこんなにも悲しい。傷つくことは怖ろしい。

暗闇の鼓動に耳を澄まし、解読するのが作家。

「20歳以上の経験はいらない。作家はそれまでに必要以上の経験をする」

初恋あるいは初“愛”の“リライト”を繰り返して、いつまでも海辺の家で待ってる。
約束を守り、ハッピーエンドの訪れを信じている。

『きっと、星のせいじゃない。』ほど洗練されてはいないが、自伝的要素も投影された愛すべき初監督作品。
読みたくなる書き出し。次回作へと、追ってみたくなる駆け出し。


☆3.9

(2017/4/05)

I've Just Seen a Face

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