何かを得るためには、何かを捨てなければならない。
何かを成し遂げることのできる者は、捨て去ることを厭わない者だ。
好きになっては愛さずにいられないその男は、何も捨てることができない。
忘れられない、見捨てられないことだけを見つめてきた瞳の色は変わることがないが、気付けば目元に皺は刻まれ十分に歳をとっていた。
時の流れに取り残される男が人並の幸福を手にするのは、おそらくまだまだ先のことだろう。
社会性を欠いた個性は、孤独を免れない。
優し過ぎる男。その過分の優しさは、人のためにも自分の成長のためにもやはり余計なのだ。
それでも、弱き者の不器用な生き方に内包される、いつまでも“いい子”であるが故に失われない優しさは、この社会の良心には違いないはずだ。
☆4.0
(2017/4/18)