散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-01-29から1日間の記事一覧

ブルーバレンタイン

愛こそすべてのロマンティシズムを地で行く男の、愛の無謀。 ‘君と僕 2人きり他には誰もいらない富や名声より魂を愛するなら魂が同じように感じるなら振り返ることなんかないあなたはただこう言えばいいの君と僕 君と僕君と僕以外に 誰もいらない’(You And M…

トリコロール/赤の愛

「トリコロール」三部作の最終編。自由(青)、平等(白)が、博愛(赤)に結ばれるフィナーレ。 晩年のキエシロフスキーが果たした邂逅。愛の権化たる“ミューズ”、イレーヌ・ジャコブの存在の内側から発せられる、柔和で「美しい光線」。単なる無垢に非ず、…

ドライヴ

静寂を突如として襲う暴力の衝撃。 恋とバイオレンス、正義と悪、生と死。隣り合わせのロマンティックとグロテスクが融合する甘美。耽美と露悪に共立するこの世界のリアル。寡黙な男がその腕力によって愛する者を守る、愛のむきだしに痺れる。 静謐な画調に…

ポゼッション

壁が隔てるベルリンの街。望んだわけではない。理屈通りにいかない。飽和状態の愛の終わり。最早、妻は、愛していたはずの夫に触れられたくもない。拒絶反応に曝される夫は、泣きすがり、のたうち回って、絶望し、発狂していく。突然豹変した妻は、まるで“怪…

幸せになるためのイタリア語講座

抜き差しならない事情に追われて、淡々と過ぎる日常を生きる人々。束の間、肩の荷を下ろして、学びの喜びや隣人との交流に活力を蓄え、心を再生させられる場所。週に一度のイタリア語講座は、侘しい生活にささやかな彩りを加えてくれる。出会いは縁となり、…

惑星ソラリス

“鏡”に向かう罪人の意識は、インナースペースに立ち込める濃霧に引き寄せられる。 潜在意識を反射する“海の惑星”では、形而上的領域が物質化して立ち現れる。彼を、良心の呵責、悔恨に苛む罪の実体は、怨霊の如く、恋慕の情に訴えながら精神を内部崩壊させて…

軽蔑

「カミーユが去っていくことは破滅を意味する。それが現実になってしまった」ある意味で実話。映画製作の困難と、アンナ・カリーナとの愛の苦悩を同時進行に描く。 ほんの些細な、しかしそれは決定的である過ちの瞬間が、残酷にも記される。 愛を崩壊させる…

ビフォア・サンセット

人間は人生の瞬間の積み重ねでできている──。 『ビフォア・サンライズ』から9年後、役と俳優と観客が同じ年月を経て再会する『ビフォア・サンセット』。イーサン・ホークとジュリー・デルピーと、監督のリチャード・リンクレイターがアイデアを持ち寄って、…

ミスター・ノーバディ

“以前は人生の選択ができなかった。何が起こるか分からなくて。今は分かっているからこそ選択できずにいる” 「選択をしなければ全ての可能性は残る」 唯一の可能な動きは、動かぬこと──。 老人が過去を事実として、未来を起点に回想するもの。現在を起点とし…

夏の遊び

キスをして、沈黙を共にし、陽光を浴びて抱き合い、夜は眠ることさえ忘れて夢中で語り合った。彼と彼女と“ワンワン”で過ごした、宝石のような日々。 切ない夢から目覚めると泣きたくなる。何もかも捨てたくなる。たったひと夏の恋が、時計の針を止め、季節は…

恋愛睡眠のすすめ

ステファンとステファニー。仲のいい双子みたいな。ロマンチックな運命の恋は、拒絶される。夢と現実の区別がつかなくなる。ガラクタに囲まれた子供部屋で幼児退行していく。キュートでポップでほんのりサイコロジカルな恋愛妄想。 <夢の作り方>1 まず頭の…

恋人たちのアパルトマン

永遠の愛の不可能性を打破すべく、一つの可能性としてのプラトニックラブ。絶えず引き合う赤い糸の緊張関係は、永続するエクスタシーだ。しかし愛と欲望に従順なその女は、その男の“愛欲”への必死の抵抗を打ち破る。“不滅の愛”への挑戦は、やがて完全なる合…

ガーデン

“第2章 堕落した町の生活を捨て 神の庭に行き さまざまな出来事に遭遇” 14章からなる、不思議の国のヤクブのおとぎ話は、放浪の旅へ出ない。リンゴの生るエデンの園には、羊飼いや哲学者ルソー、ウィトゲンシュタイン、そして“奇跡の処女”が来訪し、息子は父…

アバウト・タイム 愛おしい時間について

‘How long will I love you?’ 『きみに読む物語』にはじまった愛の思索は、一先ずのエンディングを迎える。ヒロインはレイチェル・マクアダムスが結ぶ、孤独への旅。 映画というフィクションへの投影によって、同じ時をやり直す。過去を多角的に、自分だけの…

インターステラー

<5 Dimension>が繋ぐ、外宇宙と内宇宙のランデヴー。 何人たりとも抗えない時間の経過。暴力的なまでの摂理に引き離されるちっぽけな存在、人類の進化は、愛の抵抗。 宇宙の中心で愛を叫んだ宇宙飛行士。 最新のブラックホール理論を持ち込んだ、ハードSF…

嗤う分身

太陽の昇らない、霧立ち込める、そこは町とも言えない、夜。ゴダールの『アルファヴィル』、リンチの『イレイザーヘッド』にインスパイアされた、時代不明、国籍不明の、しかしどこかレトロスペクティブな舞台設計。ドストエフスキーの『分身(二重人格)』…

ムード・インディゴ うたかたの日々

ボリス・ヴィアン著、原作恋愛小説『うたかたの日々』まえがきより。 “大切なことは二つだけ。どんな流儀であれ、きれいな女の子相手の恋愛。そしてニューオリンズの音楽、つまり、デューク・エリントンの音楽。ほかのものは消えていい。なぜなら醜いから” …

12モンキーズ

スチールカットの連続による短編映画『ラ・ジュテ』の世界観を基に、張り巡らされた伏線は“モンキービジネス”。 「おれ達の過去も映画を見るのと同じ。映画は同じなのに、見る自分が変わって違う映画に思える」「でも起こったことは変えられない。あとの祭り…