散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ビフォア・サンセット

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人間は人生の瞬間の積み重ねでできている──。

『ビフォア・サンライズ』から9年後、役と俳優と観客が同じ年月を経て再会する『ビフォア・サンセット』。
イーサン・ホークジュリー・デルピーと、監督のリチャード・リンクレイターがアイデアを持ち寄って、それぞれの人生が投影される会話劇。

過ぎし日々を取り戻すように、失いし“恋人までのディスタンス”を埋めるように、取り止めのない話に花を咲かせては、迂回しながら、愛を確かめ合う二人。
歩調を合わせて夢中に話をする隙間に、こみ上げる後悔と惜別の念。
眩しい夕日が落日の刻を知らせる。ほんの80分で幕を下ろす映画は、愛する人とのひと時はあっという間に感じられることの追体験

今シリーズの基にあるリンクレイターの実体験は、“その彼女”と再会出来ず仕舞いの悲しい結末に終わった。
人生最高の“夜明け前”は、時に、「私の恋する心を使い果たし、感情を奪い去る」。
しかし、ジェシーはあの一夜を小説に記し、セリーヌとの再会を果たす。
「物書きはすべからく避けようのない己の人生を利用するものだ」
二人のストーリーは、9年後の『ビフォア・ミッドナイト』へ続き、またその9年後へと続いていくのかもしれない。

「自分の心の鍵穴から世界を見る、すべては自叙伝」

「それは思い出の幻想ではなく、両者の瞬間は同時に存在し、一瞬にして人生はすべて一つに重なる。ある瞬間が、別の瞬間も含んで、同時に存在している」

生きてる限り過去は変えられる。


☆Review

(2016/09/05)