散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

軽蔑

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カミーユが去っていくことは破滅を意味する。それが現実になってしまった」
ある意味で実話。映画製作の困難と、アンナ・カリーナとの愛の苦悩を同時進行に描く。

ほんの些細な、しかしそれは決定的である過ちの瞬間が、残酷にも記される。

愛を崩壊させるには十分に溜め込まれた不信。
一度冷え切った愛は、慣性の法則に従い、無抵抗に止まることなく離れ続ける。或いは、いくら追いかけようとも、磁石の同極が決して合わさらないように、こちらを向き直ることはない。
愛とはいとも簡単に反転し、“軽蔑”に変わるものか。そう夫の目には映る。

“分析して行動を起こす夫、それに対して、植物が生きるために水を欲するように本能に従って行動するカミーユ
理由があるとすれば、全て。それ以外に答えようがないし、説明する必要もない。

「明らかに見抜かれているのに、どうして冷静に彼女を理性の餌食にできるだろうか」

映画は、せめてもの愛の翻訳である。


☆Review

(2016/09/05)